第129話華音のお迎え騒動 華音と瞳の母好子は秘密?の約束

約束した華音のお迎えの時間、午前8時が近づいてきた。

瞳は、ソワソワして、居ても立っても居られない、10分前からリビングで待つ。


母好子は、笑いをこらえきれない。

「瞳、チャイムが鳴ってから、おもむろに動けば?」

「ほんと、華音ちゃんのことになると、全く落ち着きがない」


瞳は、いつもなら言い返したいけれど、母の言うことが、その通り。

「華音君がお迎えに来る」で、気持ちは一杯。

この時点で、教室でいつも隣に座っているとか、お弁当を一緒に食べているとかの、余裕は何もない。


午前7時57分になった。

瞳は、ドキドキして顔がすでに真っ赤。

目を閉じて、胸をおさえている。


午前8時になった。

「お約束」のチャイムが鳴った。

インタフォンから、「三田華音と申します、瞳様をお迎えに上がりました」の、いつもの落ち着いた華音の声。


瞳は、「はい!」声が裏返った。

そして、そのまま、母好子の顔を見ようと、閉じていた目を開ける。


・・・が・・・母の姿が無い。

しかも、玄関をガチャリと開ける音。


瞳は、そこで超焦った。

「あーーー!やられた!」


瞳は超焦って、玄関に急ぐけれど、その途中から、母好子と華音の会話が始まっているようだ。


好子の声が弾んでいる。

「あらーーー!やっぱり華音ちゃん?」

「大きくなったねえ、可愛いし、いい男」


華音の声も聞こえている。

「好子さん、懐かしいです」

「子供の頃は、よく可愛がっていただいて」


瞳は、ようやく玄関に出た。

その瞳を見て、華音はにっこりと「おはようございます、今日はよろしくお願いします」を言うけれど、


母好子は、瞳を見て笑う。

「ねえ、華音ちゃん、いつもいつも瞳のお世話で、ごめんなさいね」

「さっきから、華音ちゃんが迎えに来るって言って、ソワソワしていたくせに」

「いざっていう時に、出遅れるの」


瞳は、ここでも、全く反論できない。

華音の前で、母と論争するのも難しいこともある。


それでも、華音に声をかけた。

「華音君、お迎えありがとう!」

「お手伝いさせていただきます」


華音は、またにっこり。

母好子には、しっかりと頭を下げ

「申し訳ありません、今日、一日瞳さんをお借りいたします」


母好子も笑う。

「はい、ビシバシ使ってください」

「少々、おっとり娘なので、それくらいで」

そして、そのまま、華音の耳元で何かを言っている。


華音は、少し驚いた顔。

しかし、すぐにまたにっこり。

「わかりました・・・では・・・」

目で瞳に「出発しよう」との合図。

そして、ようやくの、華音の家への出発となった。


ただ、瞳は、母好子が華音の耳元で言った内容を聞くことはできなかった。

何度聞いても、華音は、「それは好子さんと僕の約束」と笑うだけだった。

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