第128話書籍整理当日の朝 瞳と母好子

華音の住む洋館の1000冊以上の書籍整理の当日となった。

瞳は、とにかく、ソワソワしている。

それは、華音が迎えに来るから。


「あーーーどうしよう・・・」

「髪型変かなあ」

「このセーター・・・うーん・・・」

「多少はフレグランスを付けたほうがいいのかな」


瞳の母、好子は、そんな瞳に呆れるやら笑うやらになっている。


「瞳、作業をするんでしょ?」

「書籍の整理とかって聞いたけれど」

「重たい書籍もあるから、汗もかく」

「動きやすい服装にしなさい、スカートはやめたほうがいいかな」


ただ、瞳の母好子も、うれしくてたまらないようだ。


「わーーー何年ぶりかなあ、華音君を見るのって」

「可愛かったなあ」

「時々、抱っこしたもの」

「膝の上に、チョコンと乗ってね」


瞳は、母好子がそんなことを言いだすので、驚くやら何やら。

「もーーー!どうして黙っていたの?」

「お母さん、秘密主義?」


母好子は、そんな瞳の文句には付き合わない。

というより、いきなり現実に戻す。


「いい?瞳、あのお屋敷に行くんだよ」

「しっかりとご挨拶」

「マナーには十分注意」

「シルビアちゃんも春香ちゃんもいるの」

「恥ずかしいマナーをすると、呆れられるの」

「それが瞳にとって、どういう結果になるのは、わかるよね」


瞳は、その言葉で、浮ついていた気持ちが、シュンとなった。

「うー・・・デートと思ったけれど・・・」

「気が重くなった」


母好子は、真顔。

「作業中は、他の人の動きに合わせて」

「スムーズに指示通りにね」

「それから、立花さんのことだから、美味しい料理も準備してある」

「くれぐれも、粗相のないように」


瞳は、ますますシュンとなる。

「・・・うん・・・気持ちが重い」


母好子は、そんな瞳が気に入らない。

少し強い口調。

「あのね、瞳」


瞳は母好子の顔を見る。


母好子は、真顔のまま。

「あの華音君が、わざわざ瞳を迎えに来てくれるの」

「それも、縁なの」

「だから、それを活かしなさい」

「最初から気圧されてどうするの?」


瞳は、素直に母の言葉を聞く。

「うん、気合入れる」


母好子。

「華音君が好きなんでしょ?」


瞳は、頷く。

少し目に涙がにじんでいる。


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