第123話篠山組は全員逮捕、柳生隆は裏柳生?
篠山組の事務所から、国税調査官により発見された億近い現金の束についての追及が続く。
国税調査官
「篠山区議、現金の帯封が、全国各地の金融機関のもの」
「日銀はほとんどない」
「地銀や、信用金庫、JAまである、それも北海道から沖縄まで」
「ということは、全国各地の金融機関で帯封された現金が、ここに持ち込まれたことになる」
「いったい、誰から受け取った現金なのか」
またしても、篠山区議は明確な返事ができない。
「いや・・・そんな帯封までは、私の知らないこと・・・」
国税調査官
「帯封はともかく、誰からこの現金を受け取ったのか?」
「どういう管理をしているのか」
「管理簿とか、管理台帳はないのか?」
篠山区議は、口ごもる。
そもそもが、「持ってこい詐欺」の相手から、奪い取った現金。
それをそのまま、金庫に入れた。
しかし、そんなことを口に出すことはできない。
別の国税調査官が、調査対象の篠山組PCから数枚、何か台帳のようなものをプリントアウトして持ってきた。
それをちらっと見た篠山区議の表情が、蒼くなった。
「あ・・・それは・・・困る!」
国税調査官
「何が困る?」
「人の名前と電話番号が書いてあるけれど・・・」
「✖がついたり、〇がついたり・・・あれ?500万って何?」
「他にも600万、1000万、・・・いろいろあるなあ・・・」
「それも、全国各地?」
「何故、全国各地?」
「篠山組は、全国各地で仕事をしているのか?」
「それにしては、全て個人名・・・土建屋なら、その種の業者との連絡簿であるなら理解できる」
ますます震えてきた篠山区議を横目に、国税調査官の一人が名簿に「〇」がついた人に電話をしている。
国税調査官
「お忙しいところ恐縮ですが、東京国税局と申します」
「今、杉並区の篠山組という所から、お電話をさせていただいております」
「誠に失礼とは存じますが、篠山組とは、どのような御関係が?」
「たまたま、ここの篠山組の名簿に、あなた様のお名前とお電話番号、それから・・・500万円という記載があったものですから・・・」
この国税調査官の連絡から、電話先が「持ってこい詐欺の被害者」であることを、証言。
そして、金額記載と、「〇」がついた他の電話先からも、同様の証言。
これで、篠山組が「持ってこい詐欺」の元締めということが確定した。
国税調査官は、即座に、その旨を警視庁に連絡。
警視庁の対応も早かった。
国税調査官からの連絡30分後には、警視庁本庁が地域警察を伴って篠山組に到着。
篠山区議と、篠山組の従業員は、全て逮捕連行の運びとなった。
さて、華音は、その様子を、柳生隆から連絡を受けた。
柳生隆
「知りあいの国税調査官に入ってもらって、調べてもらった」
「今は、篠山組は全員逮捕、息子も逮捕」
華音は、驚いた。
「隆さんも、仕事が早いなあ」
「内偵していたの?」
柳生隆は、フフッと笑う。
「それは内緒、言うわけないでしょ」
華音も笑った。
「そうか・・・裏柳生の技?もともとは忍者?」
柳生隆はまた笑う。
「あはは、甲賀も伊賀も・・・」
華音と柳生隆は、忍者談義を始めてしまった。
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