第121話華音と瞳の母の過去?

さて、瞳は華音に、その「驚くしかないこと」を聞き返そうと思ったけれど、電車は久我山駅に着いてしまった。

華音は瞳に声をかけた。

「くわしいことは、いずれまた、お話します」


瞳は、素直に頷く。

実はうれしかった。

「うん、楽しみにしています」


そして、華音と手を振って別れ、瞳は家に戻った。


瞳がリビングに「ただいま」と入ると、母が編み物をしている。


瞳はソファに座って話しかける。

「ねえ、お母さん、華音君、すごいよ、いろいろ」

「へえ、何かしたの?」

「剣道部、空手部は、コテンパンに主将も顧問も倒して」

「うん、それで?」

「今日は、あのゴロツキに篠山さんと、その父を退治」

「結果的には、篠山さんは学園追放みたい」

母は、頷いた。

「篠山君のお父さんのほうも、相当危ないみたいね」

「さっき、近所の噂で聞いたよ」

瞳は、驚いた。

「え?何かあったの?」

「何でも経理の不正が発覚して、国税の調査が入ったみたい」

「誰かが通報でもしたのかなあ」


瞳は、「国税」と言われても、あまりよくわからない。

それよりも、母に聞きたいことがあった。

「ねえ、お母さん、さっきね、華音君から不思議なことを聞いたの」

母は、瞳を見て笑った。

「また、華音君?最近、華音君のことばかりね、あなた」

「ちゃんと勉強してる?」

瞳は、真っ赤になる。

「えーーー?そう?」

「勉強?してるよ?」

答えが、ちょっと焦っている。


母が瞳をじっと見た。

「それで何なの?華音ちゃんの不思議なことって」

いつの間にか、母は「華音ちゃん」と呼び方を変えている。


瞳も母をじっと見る。

「華音君が言っていたんだけどね、お母さんのこと」

母は、うんと頷く。


「ねえ、お母さん、奈良の華音君の実家に行ったことあるの?」

実は、これが華音から聞いた、「驚くしかないこと」だった。

そうなると、母は華音の杉並の超豪邸や、奈良の実家にも、行ったことがあることになる。


母は、また笑う。

「あはは、あるわよ」

「華音ちゃんの奈良の、すっごいお屋敷ね」

「両方のお祖父さん同士が仲良かった関係もあってね」

「社員旅行、つまり、私は杉並の方の貿易会社の旅行で、お泊りしたこともあるの、楽しかったなあ」


瞳は、目を丸くするばかり。

とにかく、「へぇ・・・」になる。

その瞳に、母はまた、笑い、驚くようなことを言った。

「だってさ、シルビアちゃんとも春香ちゃんとも、一緒に露天大風呂に入ったもの・・・そして華音ちゃんともね、三人とも可愛かったなあ」


瞳は、またしても「えーーーー?」と、驚くばかりになっている。

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