第105話VS柔道部副主将篠山(3)

篠山は、華音の目を見返した時点から、異変を感じていた。


「何だ?こいつ・・・」

「目が異様に光っている」

「怖い目だなあ・・・マジ、日本刀の切っ先みたいな目だ」

「それが、目の中にある」

「そんなのに斬られたら、ハンティングナイフじゃ、負ける」

「しかも、華音の剣道は半端ないって聞いたぞ」


華音の目の中に感じた「日本刀の切っ先」と、華音の「剣道」を混同するほど、篠山の心は、揺れ動く。


その篠山の心に、またしても変化が起きた。

今までの、反則まがいの攻撃の後では、まったく考えなかったことが浮かんできたのである。


「華音が言っていることは、普通のこと」

「確かにだまし討ちだ」

「多くの人に迷惑をかけているのは事実」


そう思うと、どういうわけか、馬鹿馬鹿しくなってきた。


「これが楽しい?」

「だまし討ちをして、他人の首を絞め」

「それを多くの嫌そうな顔をした同じクラスメイトに見られ・・・」

「しかも柔道部顧問も、空手部顧問もいて・・・」

「う・・・学園長まで?」

「これじゃあ、だまし討ちにも何もなっていない」

「闇討ちは、人に隠れて知られないようにやるものだ」

「単なるガキの暴行?」

「喧嘩をしかけただけ?」


首を絞めている剛の苦しそうな呼吸も気になってきた。

「突然、文句をつけて襲ったのは、俺だ」

「俺の方が考え無しで、マジ、ガキか?」

「マジ、見っともねえ・・・こんな姿」


そこまで思いが浮かんで、再び華音の目を見ると、恐ろしくなってきた。

「正論・・・その刀の切っ先が、メチャクチャに光ってる」


その華音の目線の切っ先は、グイグイ、篠山の目に迫って来る。


「何だ?こいつ・・・」

篠山の身体が、震えはじめた。

そして、感じたことのない恐怖と痛みを感じはじめた。


「怖い・・・」

「ヤバイ!」

「華音の目線が、俺の目に刺さる・・・」

「あーーーーー!グイグイ・・・切っ先が食い込んで・・・」

「痛い!」


篠山が、そう感じた時だった。

その腕に全く力が入らなくなった。

剛を絞めていた腕は、ダラリと垂れ下がり、篠山は放心状態。

そのすきに、剛はサッと立ち上がっている。

そして華音の横に。


剛は、華音に頭を下げた。

「華音君、ありがとう」


華音は、篠山を見据えながら、首を横に振る。

「いえ、大丈夫ですか?苦しくはないですか?」


剛は

「ああ、何とか締め落されなかった」

そして、華音の顔を見た。

「突然、篠山の腕に力がなくなったんだけど」

不思議でならないようだ。


華音はその質問には答えず、腕をダラリと下げ、放心状態の篠山に近づいていく。

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