第103話VS柔道部副主将篠山(1)

さて、柔道部副主将篠山は、空手部主将剛の首を、後ろから絞めながら、笑いが止まらない。


「コーラ入りのペットボトルを投げつけられて、下手に叩けば、コーラが飛び散ることぐらい、わからないのか」

「だから、道場空手なんて、子供だましって言うんだ」

「そんな子供だましの程度の低い練習ばかりしているから、奈良のド田舎から来た華音なんてガキに負けるんだ」

「しかも、お前は空手と同じ、思ったことしかできない、それで校門で華音に迫って逆に先生に叱られ?」

「あげくのはてに、道場破りをされて、コテンパンにのされた?」

「それも顧問まで?」

「マジ!弱いなあ」

「それで格闘技?」

「一年坊主、それも、奈良のド田舎のガキに負ける?」


ニタニタと笑いながら、同じことを何度も繰り返して言う。

とにかく、相当しつこく、粘着質の性格のようだ。


ただ、空手部剛も、必死に首絞めに耐えている。

篠山の腕と自分の首との間に指を差し入れ、「絞め落されないように」耐えている。

しかし、篠山には言われたい放題、剛からは何の言葉を出すことができない。



その状態の時に、華音が入って来た。

剛は、まだ絞め落されてはいないので、驚く。

篠山は、また笑う。

「おい!あいつか?」

「お前と顧問の松井が、ぶっとばされた、ド田舎の奈良から来た一年坊主って」

「笑えるなあ」

「お前を救いに来たのか?」

「正義の味方?」

「一年坊主に助成される空手部主将?」

「しかも、華音は空手部でもなく、ド素人だろ?」

「そうだよなあ、空手って子供だましだからなあ」

「ド素人にも負ける、空手部主将の剛さん」

篠山は、入って来た華音と絞めあげている剛を見ながら、しつこく言い続ける。



その篠山を見ていた華音が口を開いた。

「あの、僕のことで、もめているって聞いたんですが」

いつもの、冷静な口調である。


その華音に篠山はせせら笑う。

「ほー・・・お前が華音?」

「奈良のド田舎から来たって?」

「で、ド素人のくせに、空手部主将と顧問をぶっとばしたって?」

「は?」

「信じられないねえ!」


華音は、冷静な顔のまま。

「篠山さんって、名前をお聞きしたんですが」

「僕のことで、どうして剛さんと、こうなるんですか?」

「僕が気に入らなかったら、直接僕を叱るなりすればいいのでは?」


篠山はまだ、せせら笑う。

「は?どうだっていいだろう?」

「まずは、剛が気に入らなかったから、絞めているだけ」

「華音?お前はその後、つぶす」


華音は、首を傾げた。

「そもそもとして、教室内で、こういう喧嘩とかするべきなんですか?」

「他の生徒に迷惑までかけて」


そして、その声が、少しずつ大きくなる。

「それが、下級生の見本となるべき、最上級生のするべきことなんですか?」

「その床に転がっているコーラのペットボトル」

「しかも、コーラがこぼれて床を汚しています」

「コーラを作った人にも失礼」

「床を掃除する仕事も、増やしているではないですか?」


華音の目が、厳しくなっている。

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