第102話新たな情報を受け、華音は喧嘩の教室に出向く。

腕を組んで考え込む華音に新たな情報が入って来た。

二年生のテニス部小川恵美も、華音のクラスに飛び込んで来た。


「華音君、今、空手部の剛さんと柔道部の篠山さんが大喧嘩」

「何でも、華音君にぶっとばされた空手なんて弱いって篠山さんが、剛さんを馬鹿にしたんだって」

「そしたら、剛さんって直情型でしょ?」

「途中までは我慢していたみたいだけど」

「篠山さんの、あのネチネチとした口調が続いて、とうとう切れてね」


沢田文美も、また華音のクラスの生徒も、その様子が気になった。

沢田文美

「で、バトルは教室の中?」

小川恵美は、頷いた。

「うん、篠山さんが飲みかけのコーラのペットボトルを剛さんに投げつけた」

「その炭酸が目に入ったのかな、剛さんが下を向いた時に、篠山さんが後ろに回って首を絞めているんだって」


そこまでの状況が分かった時点で、華音は立ちあがった。

その華音に声がかかる。

沢田文美

「華音君、まさか行こうと思っている?」

小川恵美

「あくまでも空手部と柔道部の喧嘩でしょ?行かない方がいいよ」

雨宮瞳

「火に油を注ぐよ、行ったりすると」


他の生徒も不安そうな声。

「先生方に対応してもらったら?」

「校内の暴行事件だよ」


ただ、華音は、そんな声は聞かない。

「そんなことでは、解決しません」

「それに僕が原因なら、対応します」

華音は、お弁当もそこそこに、教室を出て歩きだしてしまった。


沢田文美は、「もう!仕方ない!」と、華音の後をついて行くし、小川恵美も同じ。

瞳や、クラスメイトも不安で仕方がないので、ゾロゾロと華音の後を歩く。


その華音が、三年生の剛と篠山の教室に到着すると、やはり心配なのか、たくさんの学生が剛と、剛の首を後ろから絞める篠山を見ている。

ただ、誰も止めに入ろうとする生徒もいない。


また、いろんな言葉が飛び交っている。


「篠山さんって狂犬って言われているし」

「止めたりしたら、絶対後で報復がある」

「ネチネチとしつこくて」

「ナイフ持ち歩いているし」


華音は静かに、見守っている三年生の生徒に尋ねた。

「あの、危険な状態のようですが、先生方は?」

三年生の生徒が答えた。

「うん、今、空手部顧問と柔道部顧問を呼びに行っている」

そして華音の顔をマジマジと見る。

「ねえ、華音君なの?」


華音は、頭を下げる。

「はい、最近転校してまいりました三田華音と申します」

「申し訳ございません。私に関係することのようで、ご迷惑をお掛けしてしているようで」


謝罪までする華音に、三年生たちから声がかかる。

「何言ってるの?」

「華音君は直接関係ないって」

「下手に顔を出すと危ないよ、何をされるかわからない」


しかし、華音は、そんな声を何も聞かない。

そのまま、教室に入り、剛と、その首を後ろから絞める篠山の前に立ってしまった。

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