第85話学園では大評判となる華音たち 来客に顔を赤くする華音
華音と文学研究会、雨宮瞳が、「持ってこい詐欺」のヤクザ男を倒し、おばあさんを救った話は、学園内に広まっていた。
華音と雨宮瞳が学園長と離れ、校舎に入ると、いろんな生徒から声をかけられる。
「すごいなあ、すばらしい!」
「いいことしたね、でも大丈夫?」
「刃物を持ったヤクザを退治したなんて、かっこいい」
「今日の通学の時に、地域の人にほめられたよ、僕じゃないけど」
「すごく感謝されているみたい、華音君たちのおかげで」
・・・・・いろいろと続いていると、文学研究会の長谷川直美が笑顔で、華音と瞳の前に歩いてきた。
長谷川直美
「おはよう、昨日はご苦労さん、すごい評判になっているよ」
「私も拍手されたり、声掛けられたり」
いつもの長谷川直美のお高いような表情ではない
とにかく笑顔が明るい。
華音は、頭を下げた。
「はい、こちらこそ、おばあさんも今朝、博多にお帰りになりました」
「新幹線でしたので、お昼過ぎには家に戻れるようです」
「何とか、人助けできて良かったと思います」
何とも華音らしい、「教科書通り風」の言葉になるけれど、長谷川直美も瞳も、うれしそうに聞く。
また文学研究会の花井芳香、佐藤美紀、志田真由美も、華音と瞳の前にきて、とにかくご機嫌。
花井芳香
「とにかく、昨日の話題で持ち切り」
佐藤美紀
「華音君のおかげかなあ、瞳もがんばったね」
志田真由美
「おばあさんも、よかったねえ、たまたま華音君がいて」
・・・・いろいろ盛り上がるけれど、華音はにこにことして聞いているだけ。
華音と瞳が教室に入ると、また大きな拍手、萩原担任からも
「素晴らしい人助け、クラスの誇り、学園の誇りです」
と、声をかけられる。
そんな大騒ぎの状態のまま、一日が過ぎ、放課後となった。
華音は、吉村学園長に呼ばれたので、学園長室に出向くことになった。
「失礼します」
華音が学園長室のドアをノックし、中に入ると、立派なスーツを着た紳士が1人、シックな紺のスーツを着た若い女性が1人、座っている。
吉村学園長から、
「華音君、私の隣に座って」
と、声をかけられ、華音が吉村学園長の隣に座ると、目の前の1人の紳士が華音を見て話し出す。
「華音君ですね、文化庁の高村善彦と申します」
「それから、私の隣は今西圭子、同じ文化庁の所属、私の部下となります」
高村善彦の隣の今西圭子も頭を下げる。
ただ、今西圭子は、華音を見て、うれしそうな顔。
吉村学園長が、華音に笑いかける。
「華音君、懐かしいでしょ?圭子ちゃん」
華音は、その顔がすごく赤くなっている。
そして、すぐに声が出せない。
それでも、やっと言葉を出す。
「あ・・・三田華音と申します」
「・・・はじめまして・・・じゃない・・・圭子さんとは、お久しぶりで」
華音は、今までとは全く異なる。
冷静ではない、とにかく真っ赤、固まってしまった。
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