第66話文学研究会情報

華音は、女子全員の表情が気になった。

「あの・・・何か、問題でも?」

華音としては、文学研究会の場所を聞くくらいなので、特段に難しい話ではないと思っている。


沢田文美が口を開いた。

「あのね、華音君、場所としては、学園図書館の隣の部屋」

華音は、ニコッと笑う。

「それはそれは、便利な場所ですね、ありがとうございます」

「明日にでも、出向いて見ます」

これも、普通の話になるけれど、女子全員の表情が難しい。


小川恵美は、難しい顔のまま、

「華音君、部長は長谷川直美さんって人」


華音は、「はい」と聞くだけ、それ以上に女子全員の難しい表情が理解できない。


剣道部の奈々子

「すごくきれいでお上品な人なんだけれど・・・」

空手部の真名

「ちょっと、暗い感じ、近寄りがたい」

沢田文美

「自分のシンパだけで固めて、嫌いな人は入れないって聞いたよ」

小川恵美

「成績もトップクラスで、他人を見下すような言動がある」

奈々子

「廊下で会うと、下を向いちゃう、何か怒られそうでね」

真名

「男の子で入っているなんて、聞いたことない」


要約すれば、部長の長谷川直美という女子学生に対して、華音の目の前の女子学生たちは親近感を感じていない様子。

それが、女子学生たちを、一様に難しい表情にさせた原因のようだ。


華音は、そこで、頭を下げた。

「ありがとうございます」

「ただ、行ってみないと、話をしてみないと、わからないので」

つまり、文学研究会には出向くとの意思表示。


沢田文美

「・・・うん・・・」

小川恵美

「難しいようだったら、テニス部においで」


剣道部と空手部の女子二人は、困ったような顔。

華音の「実力」と「入らないという意思」を、わかっているため。


ただ、華音は「はい」と微笑むだけ。


そんな華音に、瞳が声をかけた。

「ねえ、華音君、そろそろ帰る?」

華音は、瞳の顔を見て

「あ、そうだね、そろそろ」


沢田文美も気がついた。

「え・・・つまらないけれど・・・あれ?」


華音は苦笑い。

「はい・・・あれをやらないと、眠れません」


小川恵美

「あれって?」


奈々子と真名も、華音の答えに注目する。


華音は、白状する。

「何しろ、奈良の祖父さんの本が500冊、杉並の祖父さんの本もそれくらいか、それ以上」

「全く整理できていなくて」

「本を入れた段ボールの隙間で、着替えをしている状態なんです」

その答えで、女子全員が固まってしまった。

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