第48話和風屋敷にて(2)屋敷の来客者など

和風屋敷は、かなり広く、数多くの部屋がある。

立花管理人が説明をする。

「基本的に、一番狭い部屋で八畳間、通常は12畳でしょうか」

「部屋数で言えば、20部屋ぐらい」

「もちろん、和室で、つなげてつかうこともあります」

「多くの人がお越しになられたお屋敷ですので」


雨宮瞳が質問をした。

「あの、それほど多くなのですか?」


立花管理人が答えた。

「はい、貿易会社の関係の客人も、それと霞が関の官僚」

「財界の方々」

「閣僚クラスの政治家」

「歴代首相も、何度かお越しになられましたねえ」


沢田文美は、足が震えた。

「マジ?由緒正しいお屋敷・・・」


華音が、少し笑う。

「沢田さん、あまり気にしないでください」

「じいさんも、その先代、先々代も人を呼ぶのが好きで」


立花管理人が華音を補足する。

「この屋敷に来られるのは、貿易を通して、海外に人脈が多いことを利用するため」

「欧米、ロシア、中東はイスラムを含めて、東洋、南米、オーストラリア、ニュージーランド、アフリカ・・・」

「いろんな国に事務所がありますし、情報が入ります」


雨宮瞳は、また質問。

「そうなりますと、お食事の手配とか大変でしょうねえ」

「あまりにも国籍が多彩なので」


立花管理人が答えた。

「大丈夫です、それなりの料理人とキッチンも揃えてありますので」

立花管理人は、それも説明をしたい様子。


華音が立花管理人に声をかけた。

「立花さん、そこまで踏み込むと、時間がどれだけあっても足りない」

「そろそろ、お茶にしましょう」


立花管理が頷いて、案内したのは、8畳間の部屋。

中央に黒檀の座卓があり、ずっしりとした座椅子が備え付けられている。


華音、シルビア、春香、沢田文美、雨宮瞳が座椅子に座ると、ほどなく和服姿の美しい中年女性が、入って来た。


「粗茶と茶菓子でございます」

しっとりと上品な声と、仕草がとにかく柔らかく美しい。

一人一人の前に、丁寧に、お茶と茶菓子を置いていく。


沢田文美は、まずお茶の香りに、魅了された。

「はぁ・・・落ち着く・・・」

「香りからして、甘い」


春香が、沢田文美に説明。

「静岡の川根の玉露を使いました」


雨宮瞳は、茶菓子に注目。

「きれい・・・ピンクと水色の花びらのお菓子?」


これは華音が説明。

「これは、このお屋敷で作った和三盆のお干菓子」


うっとりとお茶を飲み、干菓子を口に入れる沢田文美と雨宮瞳に、シルビアが頭を下げた。

「二人とも、華音をよろしくお願いしますね」

「全く頼りないけれど・・・」


沢田文美と雨宮瞳は、「とんでもない」と、首を横に振っている。

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