第7話華音の校内見学、そしてテニスコートに
少々、出発に際してスッタモンダがあったけれど、雨宮瞳と何人かのクラスメイトによる、三田華音の校内見学、部活見学が始まった。
雨宮瞳が、
「ここが図書室」「そしてあそこが音楽室」「保健室はここね」などとテキパキと説明し、三田華音はフンフンと頷く程度になるけれど、ついて来たクラスメイトは、ついつい大はしゃぎ。
図書館の前になれば、
「華音君は、どういう本を読むの?」
「文学研究会だから専門的なの?」
「こんど教えてね、一緒にね!」
となるし、
音楽室の前に来ると、
「どういうアイドルが好きなの?」
「可愛い女の子のアイドルが好きだったら、妬けちゃうなあ」
「声がやさしいから、今度カラオケに一緒に行こうよ」
となり、
保健室の前では、
「保健室の先生、色っぽいから誘惑されないでね」
「絶対一人で来ないで」
「体調悪かったら、私も誘って」
などと、意味不明な解説?まで付け加えられる。
また、そんな大騒ぎをして歩くものだから、三田華音の校内見学は、他のクラス、他の学年まで広がって、注目を集めることになった。
「あの子なの?転校してきた子って・・・」
「何か、可愛いというよりは、美人」
「うん、整った顔している」
「でも、冷たい感じはないよ、癒し系?」
「時々笑う顔は、メチャ可愛い」
など、概ね、評判がいいようだ。
さて、雨宮瞳は、華音への校舎内の説明をほとんど終えたので、
「じゃあ、華音君、次にテニスコート、グラウンド、体育館、剣道場、プールに行くよ」
と声をかけた。
華音は、ここでも素直。
「はい、助かります」
と、雨宮瞳に続いてグラウンドに出る。
また、お付きのクラスメイトも、二人に続く。
そして、最初はテニスコートの前に。
すでにテニス部の部活動が始まっており、実際に打ち合っている人たちもいる。
雨宮瞳は、その様子をじっと見て、
「今、打ち合っているのは、二年生の先輩、都大会でもいつも三位から上の人たち」
「私も、早く追いつきたいなあって思っている」
華音も、興味深そうに、打ち合う姿を見ている。
そして、
「本当に上手ですね、足の運び方、ボールを打つフォームがきれいです」
「正確に相手のボールが落ちるポイントを見切って、最短距離で詰めて」
などと、ポツリポツリ。
雨宮瞳は、その華音の言葉にドキッとした。
「え?華音君、テニスやったことあるの?文科部系でしょ?」
そして他についてきたクラスメイトも、目を丸くする。
「華音君、マジで専門的なことを言っている」
「うーん・・・何者?」
ただ、そんな質問を浴びせられた華音の表情が、少し変わっている。
華音は、誰の質問に応えず、テニスコートで打ち合う二人を凝視。
「あの左側の女の人の右足があれ?あぶないかな・・・これは・・・」
しきりに、ブツブツとつぶやいている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます