第8話テニスコートからの悲鳴、華音の動き
「キャアーーーー!」
突然、テニスコートから悲鳴が聞こえてきた。
それを見ていた雨宮瞳の表情が変わった。
「あ!沢田先輩!倒れてる!」
「右の足首?」
テニスコートで倒れた沢田という女子学生のところに、打ち合っていた女子部員、他の部員やテニス部の顧問らしい大人が駆け寄っていく。
三田華音が、雨宮瞳に声をかけた。
「まずは、保健室の先生に連絡を」
「できれば、ここまで来てもらったらどうでしょうか」
「・・・おそらく・・・右足首の捻挫かと思うんですが」
華音の冷静な言葉で、動揺していた雨宮瞳の顔が落ち着いた。
「そうだよね、華音君」
「私、それを言われなければ、テニスコートに入って立ち尽くすだけだった」
三田華音は、雨宮瞳に頭を下げた。
「あの、保健室には僕も行きます、でも、まだ・・・僕は顔見せもしていなくて・・・場所もうろ覚えで」
雨宮瞳も即座に反応。
「うん、わかった!華音君、一緒に行こう!」
「ありがとう!助かる!」
そのまま、雨宮瞳と三田華音は、保健室に向かって走り出した。
また、一緒についてきたクラスメイトも続く。
走りながら、雨宮瞳は、華音に尋ねる。
「ねえ、華音君、あぶないとか言っていたけれど、感づいたの?」
華音は、頷いて
「はい、なんとなくですが、右足がすべっているような感じがして」
「少々、不自然な感じがしたんで」
雨宮瞳は、驚いた。
「よくあれだけ見ただけでわかったねえ、華音君、経験者なの?」
三田華音は首を横に振る。
「いや、ほとんど経験ないです、それより急ぎましょう、かなり痛いはず」
一行は、そんな状態で保健室に入った。
雨宮瞳が、テニスコートにおける状況を手短に保健教師の三井春香に伝えているけれど、三井春香は途中から、三田華音に注目している。
三井春香は、少し微笑む。
「ねえ、あなたが今日転校してきた華音君?」
「学園長から、話がありましたよ」
三田華音は、素直に頭を下げる。
「はい、三田華音です、はじめまして、挨拶が遅れまして申し訳ありません」
「でも、今は何より、テニスコートへと」
保健教師三井春香も、すぐに頷いた。
「わかった、急ごう、担架も必要かな」
「華音君、持ってくれる?」
華音が担架を持ち、今度は保健教師三井春香も加わり、再びテニスコートへ急ぐ。
雨宮瞳が華音に頭を下げた。
「ごめんね、華音君、転校当日から忙しい思いをさせてしまって」
華音は首を横に振る。
「いや、そんなことではなくて、まずは痛がっている人を何とかしてあげたいだけです、急ぎましょう」
そして、グラウンドに降りると、雨宮瞳を少し見て、一人で走り出してしまった。
その華音の後姿を見ている三井春香が、ポツリと雨宮瞳他、全員に。
「華音君は、いろんな奇跡を起こすかもしれないよ」
「おそらく、信じられないような不思議なことを」
「え?」となる雨宮瞳他全員をよそに、三井春香の目が輝いている。
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