第5話華音とお昼を食べると、美味しくなる?
華音は、じっと見つめて来るクラスメイトに、また微笑んだ。
「そろそろ、食べましょう」
何のことはない、目の前にお弁当があるのだから、食べましょうという意味。
しかし、ほぼ華音の動きに注目するしかなかった面々は、ハッとした顔。
「それはそうだ、当たり前だ」
「食べるために、こうして机を寄せたんだから」
「ふむふむ、おかずは何だろう」
などと言って、それぞれのお弁当箱を開けて、食べ始めようとする。
と、その時、華音がまた、新しい仕草。
自ら持ってきた柿の葉寿司弁当に手を合わせ、
「いただきます」
と、つぶやいたのである。
「う・・・」
食べ始めようとしていたクラスメイト全員の箸が止まった。
「私もする」
「うん、当たり前だけど、私もする」
「ほーーー・・・久しぶりだ、こんなの」
と、結局、全員が「いただきます」をして、食べ始めることになった。
さて、食べながら話は進む。
「華音君はいつもいただきますって言うの?」
華音
「はい、子供の頃から」
「礼儀正しいね、しつけかな」
華音
「このお弁当を作ってくれた人にも、たとえばお米にでも、いただきますって言うことにしているんです」
「ふーん・・・考えたことない」
華音
「一粒の米にしても、その種から始まって、様々な人の努力、風にもやわらかい風もあったり激しい風があったり、水の管理、台風もあったりで、こうやって食べられるようになるまで、いろんなことがあったのかなあと思うと」
「そういえば、そうだよね、全ての素材がそうだ」
華音
「だから、心をこめて、いただきますって」
華音がそこまで言って、また微笑んだ時だった。
一緒に食べていたクラスメイトの顔が変わった。
「あれ?味が違うって感じ」
「いつものお弁当だよ、母が作ったお弁当だけれど、いつもより美味しい感じ」
「今までは、あまり考えないで、バクバク食べていたけれど、うーん・・・美味しい、ゆっくり食べる」
「普通のレンコンの煮物が、どうしてこんなに美味しいの?」
「私のホウレンソウの炒めものも・・・美味い・・・マジ?」
とにかく、全員が、本当にいつもより美味しいらしい。
かといって、バクバク食べるわけではなく、味わって食べている感じ。
「それにしても・・・」
雨宮瞳は、華音を見て、首を傾げている。
「本当に、ほんわか系だなあ」
「もうこれで、溶け込んでいるって感じ」
「でも、特別な派手なことは何もなく」
「何となく、一緒にいたいって感じかなあ」
「やさしいよね、とにかく」
そんな状態で、華音を囲んでの「お弁当の集い」は、ほんわかと進んでいる。
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