吹奏楽部の山田さん

南萠衣

#1 ウチの部長は変人だ

僕の名前は斎藤敦。吹奏楽部でチューバを担当している、高校3年生だ。

そしてもう1人、紹介しておきたい人物がいる。

僕と同じチューバを担当している山田さんだ。

ダラリとした制服の着こなしをしていて、身長が低い彼女は、周りからゆるキャラ的扱いを受けている。

そんな彼女なのだが、ウチの吹奏楽部の部長をしている。


山田さんは理不尽だ。


ある日の部活中には

「おいさいとー!お腹空いたと思わないか。」

「え、あ、まあそりゃそれなりに…。」

「だよなぁ…。」

「え、それだけですか。」

「うざい。」

「え、」

「敬語を使うな」

「あ、うん。」

「おっけい、あんぱん買ってきて。」

「え、なんで僕が…。」

「お腹空いたって言ってたから。ついででしょ。」

と言って購買へ行かされた。


山田さんは会話に脈絡がない。


山田さんは何を考えているのかわからない。

真面目に練習をしているところを見たことがない。


でも、凄く上手い。


だから余計山田さんの事が分からない。


ふと合奏中に山田さんを見ると居眠りしていた。

「ちょ、山田さん!バレたら怒られるって!」

僕がどんなに山田さんを揺らしても一向に起きる気配がしない。

先生がこちらを見た。

ああ、山田さん、終わったな。

僕はそう思いながらもう一度山田さんに向き直すと、先程までの爆睡が嘘だったかのように凛々しく椅子に座っていた。

「山田は偉いな、ちゃんと話を聞いていて。それに比べて敦!人に話しかけずちゃんとメモ取らんか!」

「そうだよ、斎藤くん。先生の話はしっかりね。」

山田さんが不敵な笑みを浮かべて言う。

凄く器用な体をしていると思った。


僕はそんな器用な山田さんが、少し羨ましい。いや、結構羨ましい。


山田さんは変人だ。


よく踊っているのを見る。

凄く上手いダンスじゃなくて、お笑い芸人がしていそうな、少しおちゃらけたような不可解なダンス。

フワフワしていて本当にゆるキャラみたいだ。

そしてよく分からない事を言う。


本当に山田さんは変わっている。

山田さんは一体何者なんだろうか。










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