転生先の世界を『変える』魔法
祖バッタ(羊)
第1話 転生
突然ですが、私「中島 将史」は自殺しました。
死後の世界については生前からいろいろな思考を張り巡らせていた。
でもさ…でもだよ……?
まさか、雲の上に設置(?)されたちゃぶ台でお茶をすするおっさんと対面するなんて誰が想像したよ……?
「神様だって」
おっさんは訂正する。思考を読むんじゃないよ。
しかし問題点はそこではない。
「嘘だ!」
僕は絶叫した。
そう、ご存知か否か、我が国日本では神様は美少女なのである。
こんな毛深いおっさんくさそうな奴が神様なわけがない。
風呂に入ったら油が浮くタイプだ、僕は知ってるんだ。
「思考を読まれていると知っての愚弄か」
厳しい口調ではあるが、お茶をすすり、放った言葉にも若干の柔らかさが見て取れる。
「何度も説明している通り、君がここに来たのは君の責任なんだから。普通の死後の世界なら綺麗なお姉様ひおりはいたかもしれないのに…ああもったいない」
ちょっとした反撃のつもりなのか、少し心に来る言い方をする。
このおっさんの言うところによると、僕ら人間に限らず、全生物には「死期」が定まっているとの事。
その「死期」は大雑把なものであるから、前後一年の誤差はよくあるらしい。
しかし、前後一年以上の誤差が生じる事はほぼ確実に無いという。100%と言っても過言ではないくらいの正確さだとか。
しかし、「他殺」と「自殺」に関してはその限りではない。
前者は多くの場合天国に行くことになっているが、恨みを買って殺された場合や自殺は無条件で輪廻転生の輪から外される事になっている。
まぁ、当然と言えば当然の事ではあるが…。
そして、輪廻転生の輪から外された魂の行き着く先は二択。
「異世界転生」か「消滅」
それを選ぶのは僕ら魂では無く、もちろん神様。
この死後の世界に運ばれ、目を覚ました瞬間にこのおっさんは
「はい異世界転生」
即決だった。
どうもこの神様が管理している世界は戦争中らしく、なにしろ人手が足りないと。
場所にもよるが、異世界転生すると好きなスキルを創造しても良い事になっている。
創造したスキルは、努力しても身につかない「固有スキル」としてサービスされる、と言うこと。
で、今は「固有スキル」作り中。
固有スキルは魔法とは違う扱いになり、魔力消費が無いからトンデモ魔法を作ってもいいらしい。
でもおじいちゃんは平和な暮らしがしたいんじゃ~
「いやぁ、戦争中だし無理じゃないのかなぁ」
おふざけながらそんなことを考えていると、おっさんが横槍を入れてきた。
「長い間戦争してるんでしたっけ」
うん、と言う代わりにおっさんは目を瞑ってお茶をすする。
「……なんででしたっけ?」
そういや理由を聞いていなかった。
「特に理由は…あえて言うなら誇示かな」
「えぇ……」
大してすることも無いから始まったくらいの戦争。
お互いに引けず劣らずの戦争が長い間続いている。
「あそこは文明の差が激しくてね、今一人勝ちしているところの兵装はビームやらなんやら。」
なんと、魔法と科学の連立が成されているのか。
「負けてる国は……あぁ、君も見たことあるんじゃない?」
おっさんがホログラムみたいなのを宙に映した。
「あぁ、日本刀」
差があるにも程があるだろう。
突っ込みを入れると同時に、スキルが決まった。
「そのスキルでいいんだな?」
おっさんはチュートリアルの最終確認みたいな問いかけをしてきた。
うん、と軽く答える。
「よし…他に確認としては、身分や国はランダム、言語や知識、おまえ自身の記憶は受け継がれる。」
「記憶までいいの?」
「これは寧ろ、更生プログラムの一環みたいなもんだたらな、記憶が無きゃ始まらん。」
それに、と付け加えかけてモジモジし始める。
「おっさんが恥ずかしがる図とか誰得よ」
率直にキモいという感想しかうまれない。
「ここにある物って転生者の記憶から生成されるものだから…お前が記憶を消しちゃうとナ…」
「もういい」
それ以上はいけない。
まだおっさんが物言いたげな顔をしていらっしゃる
「協会で祈るくらいはしてやるって」
いや、そうじゃないと制される。
「その若い年で、色んな思いをしたな…スキルをいくら駆使しても良い。次の世界ではゆっくり生きてくれ…」
「…神様だろ、守ってくれよな」
そう言い残して、この世界も後にする。
……ありがとう。
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