第24話

魔龍と魔族を倒した翌朝。俺はギルドに行った。目的はSランクっぽい依頼を受けるためだ。


「おはようございます」

「おはようございます。早いですね」

「そう…みたいですね」


周囲を見回すと、冒険者の姿はない。ギルドが開いたと同時に入ったから当然なんだけど。


「今日はSランクの依頼を受けるんですよね?」

「はい。どういうものがありますか?」

「それなら、これなんてどうですか?」


ルミンさんが見せてくれた依頼書には、岩山に出現したオーガを倒してほしいという旨が書かれていた。オーガの数は5匹。俺としては強くないけど、一般的に考えてオーガは強い。Aランク冒険者なら十数人で組まなければ勝てないモンスターだ。


「これにします」


俺はオーガ討伐の依頼を受けて、岩山に向かった。岩山がある場所は街からかなり離れた場所にあるから普通は馬車で行く。でも俺なら走ったほうが速い。だから走って行く事にした。結果、馬車で行けば夜までかかるところを昼前に到着した。


「さて、次は探知魔法でオーガを探知してっと………ん?」


不思議に思った事がある。どうやらオーガは5匹ではなく、7匹いるようだ。まあ2匹の差なら、依頼が出されてから今に至るまでに、何かしらの理由で増えたのかもしれない。

さて討伐していくか。


その後、特に話す事もなく、7匹のオーガを討伐した。

それからギルドに帰り、夕方にはルミンさんに依頼達成の報告をする。その際、ギルドカードを見せて、自分が何匹のオーガを倒したかを見せなければいけない。


「依頼達成ですね。やはりタロウさんは早いです。普通ならオーガをこんな簡単に倒せないですよ」

「まあ、俺は強いですからね。他の依頼はありますか?」

「あとは、こんな感じですね」


そう言って見せてくれた依頼書は全て討伐依頼。まあSランク冒険者に薬草採取みたいな依頼はないだろうな。全ての討伐依頼を受けても良いけど、他のSランクの人達の稼ぎを奪う事になりかねないから、2つ3つにするか。

そういう事で、ドラゴンの討伐とオーガキングの討伐を受けた。オーガキングとは、名前の通り、オーガのキングの事。オーガの中でも一際強い個体がキングに選ばれるらしい。ステータスも通常のオーガよりも段違いに強いらしい。少しだけ楽しみだな。

ちなみに今は夕方だから、2つの依頼をこなした時には明日の朝になっていると予想している。

ルミンさんに、夜に出歩くのは危険だと言われたけど、夜でも生物の気配を感じたり、探知魔法を使えば、モンスターが襲ってきても大丈夫だ。その事を説明してもルミンさんは納得してくれていないようだったけど、俺の強さを信じてくれたから、行けるようになった。


「それじゃあ行ってきます」

「行ってらっしゃい。くれぐれも気をつけてくださいね?」

「はい!」


そうして俺は暗くなりかけた街を歩く。

夜になった頃、俺はドラゴンが出没しているという山に着いた。そして気配を探り、ドラゴンの居場所を突き止めると移動を始める。


「これが件のドラゴンか…2匹もいるのはありがたい」


せっかくドラゴン討伐を受けたんだ。1匹だけだと物足りないと思っていたんだ。それでも2匹だけどな。

まずは先制攻撃。ドラゴンに気づかれないように気配を消して近づくと、ドラゴンの顔を思いっきり殴る。それだけでドラゴンはその場に倒れて消えていった。

やっぱりダンジョンのドラゴンと変わらないな。いや、ダンジョンのドラゴンより弱いかもしれない。もう1匹も一気に狩るか。

残ったドラゴンは俺を見つけて口を開ける。中に見えるのは炎だから、炎を吹き出すんだろう。こんな山中で炎なんて山火事につながりかねない。さっさと倒さないとな。

そう考えて俺はドラゴンの顎を蹴り上げる。その勢いでドラゴンは口を強制的に閉じる事になり、口の中で行き場を失った炎が荒れ狂う。その後、横っ面を殴って討伐した。


「野生のドラゴンもダンジョンのドラゴンに比べたら弱いな。やっぱり経験値を稼ぐなら、ダンジョンの方が効率的だな」


それから命石と素材を回収して、次の目的地である森林に向かう。森林には夜明け頃に着いた。さっきと同じようにオーガキングの気配を感じて、見つけ出す。

オーガキングの外見は普通のオーガと同じだけど、身長が普通のオーガの2倍ほどある。まだ俺に気づいていない。野生なのに臭いとかで、俺を感じないのか?とはいえ、気づいていない事は有り難い。

俺は一気にオーガキングとの距離を詰めると、右脛に内壊波を放ち、続いて左脛にも内壊波を放つ。


「グアアアア…」


オーガキングは呻きながら両膝立ちになる。これで顔を殴りやすくなった。顔まで跳躍しても良いけど、ドラゴンと違って二足歩行だから手ではたき落とされても嫌だしな。

オーガキングの顔まで跳んだ俺は、思いっきり顔を殴る。それによってオーガキングは倒れて消える。地上のモンスターで俺の敵になりそうなのは魔龍しかいないんだろうか?


「経験値も多く貰えないし、またダンジョンに篭るかな」


オーガキングの素材と命石をマジックバッグに収納しながら呟き、街に戻る事にした。


「ただいま帰りました」


昼前、ギルドに到着した俺はルミンさんに報告する。ルミンさんは笑顔で迎えてくれた。


「お帰りなさい。やっぱり早かったですね」

「ダンジョンのドラゴンに比べたら、地上のモンスターは弱かったです」

「Sランクの中でも特別に強いタロウさんだから、そう思うんですよ。普通のSランク冒険者なら、楽勝とはいかないです」

「そうなんですか。じゃあ、他のSランク冒険者の経験値稼ぎのためにも、あまり俺が受けては駄目ですね」

「駄目という事はないですけど…お金に余裕があるなら、受けないほうが良いですね」

「分かりました。ところでゼルスとキーサは地上にいますか?」

「今日は久し振りに休憩するって言って酒場に行きましたよ。何か用事でもあるんですか?」

「また魔龍や魔族が攻めてくる可能性があるので、俺達3人が同じタイミングでダンジョンに篭ってたら人族の国が危険になるじゃないですか。だから相談して、ダンジョンに篭ってる期間がかぶらないようにしようと思ってるんです」


万が一があるからな。今までの2回は、1回は俺が相手、2回目は3人が相手をした。幸運が続いたけど、今度も同じように幸運が訪れるとは限らない。だから3人で相談しようと考えたんだ。


「それが良いですね。次に何かあった時、3人がいなければ街も国も滅びると思いますから」

「それは避けたいですね」


ルミンさんの言葉に苦笑いする。それだけは何があっても避けたいな。

それから俺はゼルスとキーサがいるらしい酒場に向かった。中に入るとゼルス達が円形のテーブルで酒を呑んでいたので近づく。


「こんな時間から酒か?」


そう聞きながら空いている椅子に座る。店員が来たから、俺は酒ではなくコーヒーを頼む。


「タロウが酒場に来るなんて、なんだか珍しいわね」

「そうだな。酒は呑まないから、酒場に入った事はないな」


酒は呑めないわけじゃないけど、好んで呑もうとは思わないからな。


「そんなタロウがどうしてここに?」

「2人と今後の事を話し合おうと思ってな」

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