第2話

おじいちゃんの口から出てくる

おかあさん

胸がグッと苦しくなる


あそこのお店さはおかあさんが苦手で

おかあさんはウニが好きだけぇ

おかあさんは昔ミカン食べなかったんだぁ

おかあさん、口さあけてだらしない

おかあさん、人生何があるかわからねぇなぁ


目を開けないおばあちゃんに

ねぼすけだなって笑かける

返事をしないおばあちゃんに

いつもみたいに声をかける

食べられないおばあちゃんの

好物を買ってくる



手を繋いで

こんな年になって

手を繋ぐことになるとはって

恥ずかしげに頭をなでる


泣きながら

おかあさん、どっちがいい。

まだ生きたいか。

金は心配しなくていい。

どうにかなる。

自分で決めろ。


おじいちゃんの肩が揺れる


さみしいから、一人は嫌だってか

おれもすぐに行くことになる

あんまり不安になるな

大丈夫


おじいちゃんの言葉に

母が目を伏せる


おかあさんはやきもちやきだから

おとうさんを一人にしたくないんだよ

浮気するなっていってるんだよ


母の言葉に

おじさんが鼻をすする


かあさん、とうさんは俺が見とくから

心配しなくていいよ


私はみんなの声に

唇を噛みながら涙をこらえる

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