パラレルワールド

勝利だギューちゃん

第1話  知らない女

目が覚めた。

「あっ、あなたお早う」

この女は知らない。

俺は独身だ。


まだ夢を見てるのか?

寝よう。

お休み、俺・・・

グーグー。


目が覚めた。

「あっ、あなたお早う。朝食出来てるよ」

またこの女だ。

だから、俺は独身だ。

彼女もいない。


まだ寝たりないのか?

寝よう。

お休み、俺・・・

グーグー。


目が覚めた。

「あなた、お早う、コーヒー入れたから、起きてね」

また、この女だ。

俺は紅茶派だ、コーヒーは飲めん。

だから、この女は知らん。


寝よう。

もう一度お休み、俺・・・

グーグー。


目が覚めた。

今度こそ、本当だろう。

女はいない。


よかった・・・ようやく、覚めた。

顔を洗ってこよう。


洗面所に行く。


「あら、あなたようやく起きた?」

回れ右。


俺、どうかしてる・・・もう少し寝よう。


「あなた、待って」

腕を掴まれる。


「あのう、失礼ですが、どちらさまで?」

「えっ、何言ってるの?妻に向かって」

「あのう、失礼ですが、人違いでは?私、独身男性なんですが・・・」

「人違いではないわよ。あなたの名前は、柳本治朗。間違いないでしょ?」

間違いない。

ならドッキリか?余計にたちが悪い。


「すいませんが、あなたの名前は?」

俺はこの女を知らない。

でも、女は俺を知っている。


誰だ?


「わからない?教えてあげる。私の名前は、旧姓難波アリス。

今は、あなたと結婚して、柳本アリス、思い出した?」


思い出せん・・・初めて聞く名だ?

俺は、中高と男子校だった。


大学も殆ど男性で、出会いはない。

会社も、殆ど俺ひとりできりもりしてる。


「すいません。一向に思い出せないんですが・・・

冷やかしなら、帰っていただけませんか?迷惑です」


女は何か考えているようだった。


「もしかして、あなたは迷い込んだのかもしれません」

「どこに?」

「パラレルワールドにです」

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