第17話 予定

 修学旅行の色々が片付いた九月。席替えも行われ、本田さんとの席は少し遠くなった。だが問題はない。修学旅行以来、本田さんはちょくちょく僕に話しかけてくれるようになったのだ。

 ほら、今も……。

「石橋君! 今日お弁当一緒に食べない?」

「あ、うん。いいよ」

「やった! 嬉しい。じゃあまたお昼に」

「うん、また」

 修学旅行の時の本田さんに協力する話はどこにったのかというくらいの変わりよう。もしかしたら気が変わって僕のことが好きになったのではないかとすら思えてしまう。

「ふふ、ふふふふふふ」

 一人でニヤニヤしていると、バシ、とノートで頭をたたかれた。

「いった! ひどいなあ、奏汰」

「不気味にニヤニヤしてるやつの方が悪い」 

「奏汰に気づかれるほど笑ってたつもりはないんだけどなあ」

「ニヤついてたことは否定しないんだな?」

「いやだってさあ。本田さんにお昼誘われたんだよ?」

「へえ。確かに、お前ら最近仲いいよな」

「うん。順調だよ」

「順調に進んでる時が一番危ない。気をつけろよ」

「はーい」

 奏汰の注意も聞き流しニヤニヤし続ける僕。

 あっという間に時間は過ぎてお昼になった。

「石橋君! お待たせ」

「じゃあ、食べようか」

「うん」

「あ、本田さんそれ」

「ん?」

「たこさんウィンナー?」

「ああ。そうそう。私これ好きなんだよね」

「自分で作ってるの?」

「うん。親が忙しいから」

「へえ、どういうの、ちゃんと考えてるんだ」

「いやまあ、お母さん料理あんま上手じゃないし、自分でやった方が早いっていうのもあるんだけど」

「へえ……」

「ちなみに今日一番うまくいったのは卵焼き。定番だけど、意外とおいしいんだよ。よかったら食べる?」

「えと、じゃあもらおうかな……」

「うん! はい、どうぞ」

「ありがとう」

 本田さんからもらった卵焼きを口へ運ぶ。

 咀嚼する。

 その間、本田さんはにこにこして待っていた。

「どう? おいしい?」

「うん! これすごいよ……! お店の味がする!」

「ほんと⁉ 嬉しい!」

 本田さんのとってもいい笑顔。

 可愛いなあ。

「あ、そうだ、石橋君」

「何?」

「今週の日曜日ってあいてる?」

「あいてるけど……」

「じゃあ、一緒に遊ぼう?」

「え」

「連絡とる用にメアド交換しておいた方がいいよね。はい、これ私の」

「あ、ありがとう……。あ、僕のも。ちょっと待って……」

「ああ、石橋君からそのメアドに連絡くれればいいよ」

「あ、そっか」

「うん。どこいくかはスマホで。ふふ、楽しみだね」

「楽しみ。うん、楽しみ!」

 こうして僕は本田さんと遊ぶ約束をした。

 着ていく服とかは奏汰に相談しよう。

 本当に楽しみだなあ。

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