第11話 イベント
もうすぐ、大きなイベントがある。中学三年生にあるイベント。
受験? 違う違う。いや違わないのだけれど、そういう楽しくないイベントではなく。
そう、修学旅行だ。今日は六月十二日。僕が通う学校では、夏に修学旅行がある。季節的にとても暑いので、保護者から時期を変えろという声も出ているこのイベントの約二か月前だ。
そして今から、修学旅行の班決めが行われる。
「えーこれから修学旅行の班を決める。この班決めは重要だぞー。親しいやつとばかり組んでも勉強にならんしなあ」
濃い眉毛が特徴的な担任の声を聞き流し、僕はどうしたら奏汰や本田さんと同じ班になれるかを考えている。
好きな人と組めたら一番いいんだけど……。
「まず二人組を作れ。そこからバランス見てペアをくっつけていくぞー」
あ、きたこれ! 絶対奏汰と一緒になれる! ついてるぞ。
「時間は二分でいいな? はい、どうぞー」
「奏汰っ! 僕と、ペアになってください!」
右手を差し出し、勢いよく頭を下げる。ここで奏汰が僕の手を取り……。
「お、おい、なんか告白みたいになってんぞ。あと……あれだ、この修学旅行、俺たちは違う班になあった方がいいと思う。ぶっちゃけ俺誘い来てるし」
「は?」
「いんや、別に慧斗と一緒が嫌なんじゃなくて、お前ずっと俺と一緒にいたら成長できないだろ」
「な、ななななななな」
「俺と一緒じゃない方が本田とも近づけるだろうし……」
「そ、それは、上官命令ですか」
「は? お前何言ってんの?」
「上官命令ですか!」
「お、おう……。そうだよ……」
何ということだろう。しかし奏汰の言うことにも一理ある。そういうことなら……、
「いたしかたない」
「なんかキャラ崩壊してるぞ」
「仕方あるまい」
「……」
「……」
短い沈黙があった後。オラオラオーラをビシバシ出しながら大宮君が歩いてきた。
「おい、石橋。てめぇ組む奴いねえの? 足立に捨てられたの?」
「なっ!」
「捨ててねぇよ」
「ふぅん? でも組む奴はいないんだろ? なぁ石橋、俺と組めよ」
「え」
「大丈夫だ。何もしねぇよ。つうかお前ここで俺の誘いけって誰と組むの? 全然話したことないやつと一緒になるよりましってもんだろ」
「た、確かに……」
でも、よりにもよってこんな怖い人と一緒だなんて。
大宮君こそ組む人いないの? という質問はしないでおこう。
「仕方ないか。お前、慧斗に何かしたら許さないからな」
「てめぇには何も言ってないって。俺でいいか石橋」
「あ、うん」
「よし、決まりだな」
二十分後。
班が決まった。
結果から言うと、本田さんと同じ班に離れた。
一班六人の五グループ。もしかしたらと期待してみたものの、奏汰とは同じ班になることはできなかった。
僕と同じ班になった人を紹介しよう。
まずは大宮君。怖い。
本田さん。嬉しい。
清水香奈さん。本田さんの友達とのことだから、きっと良い人なんだろう。頭もいいらしいし。
小野昴君。結構人気な人だけど、大宮君にビビってる感が出てる。
西野錬君。いつも小野君と一緒にいる。何というかかわいい感じの子だ。男だけど。仲良くなれるかもしれない。
そうだな、一言で言うと、大宮君を除けば良い感じの班である。安心だ。
ちなみに奏汰はというと、奏汰がまとめ役になるんだろうな、という感じの、でもなんか仲いいメンバー集まりました感がある班になっていた。
そして僕は決心した。僕に独り立ちを進めた奏汰に、返信してコミュ力めっちゃ上がった姿を見せつけてやろうと……! それから本田さんと仲良くなろうと!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます