5年後(6)
「ある日女は見つけたの。女の協力者になる人間を。こんな雨の日にね。協力者は全員で五人いた。一人目はね」
窓に当たる雨音がだんだん激しくなる。
女性の声はさっきよりも低くそしてゆっくりで、僕は話に引き込まれていく。
一人目はむかし男にいじめられた気の弱い男だった。
自分が全身ずぶ濡れで水溜まりに膝をついているような感覚におち入りはっとする。
目の前のコーヒーをつかみ口に入れ思わず吐き出す。
ざらりと泥水の味がした。
女性と目があう。
「二人目はね」
女性は目を細めた。
二人目は女だった。
下腹がどんよりと重く感じる。
なんだろうこの気だるさは、今まで感じたことのない感覚。
しだいに下腹から何かがあがってきた。
怒りを伴った哀しみが喉に詰まる。
熱いものが目から溢れそうになったとき、
「三人目は」
女性は言った。
三人目の男の話は強烈だった。
なんだか頭が痛い。
霧に包まれたように頭がぼんやりし、何かを打ちつけるような音が聞こえてくる。
とつぜん爆発的な怒りに襲われる。
思わずテーブルに突っ伏し感情を押し殺そうとしていると、肩に柔らかいものが触れた。
「大丈夫?そして四人目はね」
女性は優しくでも有無を言わせない様子で僕の体を起こすと話を続けた。
四人目はマラソン選手を目指す青年だった。
ズキリと膝が痛む。
心地よく風を浴びていたと思ったらいきなり高いブレーキ音が響き真っ暗な穴に落ちる。
失望、怒り、哀しみに押し潰されそうになる。
暑くもないのに汗がにじみ、僕は額を手で拭った。
女性は僕の様子をねっとりと確認するように見つめそして言った。
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