ファーアウト
変太郎
遠く離れた桃
太陽系の一番外側にある天体が、まさか平成最後の年に発見されるとは、誰も予想していなかっただろう。
そしてもっと予想できなかったのは、その一年後、年号が変わってから、全く同じ大きさ、色の星が大量に見つかったことである。
そこで研究者である僕は、有象無象の記者たちの前で、こんな根も葉もない説を述べてみせた。
「今後、地球は増える!」
この爆弾発言をしたあとの記者たちの様子は見ものだった。少しの沈黙を挟んで、同時に何人もの記者が質問を投げかけてきた。それに対して僕は何も答えなかった。聖徳太子じゃないのだから、などとよく言うが、そもそも聞く気がなかったのである。答えようのない質問に、無理矢理絞り出して出鱈目で返せば、あとあと大変なのは想像に易い。
しかし、この発見こそが、平成が終わったあとの日本に、もっと言えば世界中に変革をもたらすことを期待して、僕は言ったのだ。きっと、きっと僕らは救われると。僕の発見したピンク色の星が、平和の、秩序の始まりだと信じて。
次に今の位置に2018 VG18(ファーアウト)がくるのはおよそ千年先らしい。それまでにあの桃色の果実はいくつの種を世界に撒き、そこからいくつの果実が育つのか。まさにこれこそ見ものである。
僕の型破りな会見が、黒歴史にならないことを祈る。
ファーアウト 変太郎 @uchu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます