第1話 誘われし者
直径5センチ程の小さな光の球が、ゆっくりと部屋に現れると、ゆらゆらと浮遊しながら何かを探しているように動き回っている。
そこは、キチンと整理された部屋。
クローゼットの取っ手に掛けられている学生服、その襟には、公立高校の校章のバッチと1-A のバッチがついている。
その隣の取ってには、赤い野球のユニホームが掛けられてあった。
クローゼット脇には本棚があったが、本は数冊しか置かれてなく、本以外に、グローブや野球ボール、そして、【C】のマークが付いてある赤い帽子が置かれてあり、他にも、野球帽を被ってピースサインをしている子供の写真やマウンドでボールを投げている子供の写真。
病院のベッドで丸坊主のあどけなさが残る、中学生くらいの少年が同級生と一緒に写っている写真…、そして、満面の笑みを浮かべて写る少年と少女の写真…。などが飾られてあった。
本棚の隣には机があり、机の上には学生カバンと開きっぱなしのノートにスマートフォン、そして、携帯音楽プレーヤーとイヤホンがあり、その机が接している壁には、背中を見せてボールを投げるプロ野球選手のポスターが張られていて、その背中には、背番号は15で【KURODA】の文字が映し出されていた。
そのような部屋をゆらゆらと移動する光の球は、やがて、窓際のベッドに横たわっている少年の上に辿り着いた。
髪が少し長くなってはいたが、そこに眠っているのは、本棚にあった写真の面影がある少年であった。
その少年の上で小さな光の球は、ゆらゆらしながら小さく上下すると、やんわりした動きで、顔全体をかたどるように動いてから少年の顔を照らす。
そして、何度か上下すると、ゆっくりと少年の眉間に落ちて、体内へとやんわりと消えて行った。
少年の眉間に皺がより、少し苦しそうな表情を見せていると、体が眉間から薄っすらと消え始めた…そして…。
『光に呼ばれし、誘われた者よ。汝らを必要とする者の生きる世界へ、
光に呼ばれし、誘われた者よ。来たれりこの混沌の世界へと…』
複数の声が少年の頭の中を駆け巡った…。
その呪文のような声は、大なり小なりして少年の頭の中を駆け巡る、それと同時に、様々な言語の文字が浮かんできては消えてゆく。
文字が現れると同時に、その言語の発音で先ほどの言葉が繰り返された。
その状況は無限に続くような感じであり、少年は底の見えない闇に落ちてゆく感覚を抱いた。
-夢?なのか…。
あまりにも異様な状況と思って目を開けようとしたが、どうも体が言う事を聞かない…。
なにか抵抗をしようとしたが、声の波長が心地よく、力をいれる事が出来ずに、底へ、底へと落ちてゆく感じを持った。
そのまま、ゆっくり落下するような感覚を受け入れる。と…、温かく、なんとも言えない心地いい気分となり、少年を深い眠りに
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