第5話
ギルド会館。ここはファンタジー世界でお馴染みの冒険者の拠点となるところだ。ギルドというのは要するに職業組合なわけで、ギルド会館にあるギルドというのは日本語訳正式名称は「全国冒険者労働組合」。労働組合といっているが実際には共同で仕事を請け負ったり、個人への仕事の斡旋等をしている。そして、冒険者のギルドとしてはこの国唯一の国の管理下にあり規模は他の乗合馬車ギルドとかとは比べ物にならない。らしい。前に大使館であったあのイケメン外交官に教えてもらった。
そしてギルド会館前というのはちょっとしたバスターミナルいや馬車ターミナルとなっている。冒険者がダンジョンと呼ばれる不思議な迷路のような地下空間の入り口まで乗せる便とか、港町まで行く便とか色々ある。
そして弊社は唯一かもしれないが、専用の乗り場というのを確保している。先輩運転手の萩村さん曰く「おかみにたんまり上納金を払ったからできる技」らしい。なんかバス数台分らしいが詳しくは知らん。
時刻は実はまだ朝の7時5分だ。今は冬だがここは緯度が高いのだろうか。日が昇りきっておらず、あたりは少し薄暗い。が、会館前の乗り場には既に多くの弊社のバスや馬車が客待ちをしていて、多くの人でごった返していた。弊社ウチのところでもお客様がまだ来ないかと待っていらっしゃる。
ウインカーを出して停留所にさっと寄せる。歩道と車両の隙間はわずか2cmといったところか。きまった。
ハザードランプにしてパーキングブレーキをいれる。プシューと大きな音をだす。車内の設定を回送からルート369(下り)を設定し終えると。俺は後ろドアを開けた。
「お待たせいたしました。6時10分発、中央市場前経由 日本人学校前行です。」
と車外放送。自動でも流れる放送があるが俺はなんとなくアナウンスする。ドアを開けると親の都合でこっちに来ている日本人の子供たちがぞくぞく乗車してきた。気が付くと席の8割ほどが埋まるくらい乗車した。
7時10分。時間だ。
「日本人学校前行、発車しまーす。」
定刻通り出発した。
終点まで時刻表上は45分でバスは順調に走る・・・と思っていたが、
「王政はんたーい!」「増税するすなー!」
あと数百メートルという所でデモ隊が道を占拠していた。困ったな。最後の最後でまさかこんなのに巻き込まれるとは。突っ切るか。いやでも万が一のことがあったら大変だし・・・。あ、そうだ。このバスには無線がついている。運行管理者に支持を仰げばいいんだ。
おれはまずパーキングブレーキを入れて
「えーお客様にご案内いたします。この先デモ隊がいるためここでしばらく停車します。ご乗車のままでお待ちください。」
とアナウンス。すると「またかよー。」「よっしゃ一元遅れるじゃん!」とまあ当然な反応が後ろから帰ってきた。
さてさて無線のすいっちを入れ、「本部本部。こちら2023号車。現在日本人学校まで400mほどの位置です。目の前にデモ隊が行進して路線上進めません。指示願います。どうぞ。」
「本部でーす。えーと。そうですね。なんかうまく学校の敷地に入ってください。」
と自称営業所のヒロインの運行管理者 浜田さえ さんが指示を出した。なんだその指示。丸投げに近いじゃん。
いや、どうしようーと多分一分くらいだと思う。でも長く悩んでいた気がする。いや。人間焦ると体感時間が早くなるというか。
結局、乗客の女子学生が声をかけてくれて、裏門へのルートを教えてくれた。彼女いわく、
「よくこのあたり、デモ隊が通過するんですよ。ほかの運転手さんもさっきのルートで私たちを送ってくれましたよ。」
と言っていた。彼女は岩瀬さんというのだが、一瞬女神のようにみえた。いや犯罪的な意味合いではなくこう助かったという意味合いだから勘違いしないように(何を)。
こんなかんやで俺のデビュー便は終わったのだ
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