バス運転士の仕事in異世界
筒井
第1話
俺は木村達也、25歳。独身。男。三流大学卒業後奇跡的に内定した大手国内電機メーカーで営業していた。昨日までだ。出社したらニュース速報で、会社再生法を適用の申請をしたという話を聞いた。つまり倒産したんだ。
正直唖然としてしまった。社内の噂で今期は赤字らしいと聞いていた。そしていざとなれば政府がなにかしら助けてくれる。そんな認識だった。でも違った。違っていたんだ。
出社すると会社の電話がなりっぱなしだった。全部のデスクにある電話が鳴ったままだった。
その日は取引先からの電話でとにかくどうなっているんだ。製品はきちんと納品されるのかどうなのかとか問い合わせの嵐だった。
そんなかんやで上司から指示があるまで自宅待機を命じられた。上司の話ではおそらく営業部の全員が人員整理の対象になるようだ。
翌週。俺は解雇された。もちろん組合を通じて抗議したがだめだった。
しばらくして未払いの給料の一部と失業手当をもらった。助かった。これだけでももらえただけでも奇跡かもしれない。だがしばらくすると公共料金の支払いが溜まり、貯金を切り崩して生活するはめになった。
もらうものをもらうまでの間、勿論就活をしたが全滅した。
「まじまいったな・・・」
20代の若者を欲しがる企業はいるだろうと思っていたが世の中やはりそんな甘くはない。薄々わかっていた歯いたが、さすがに精神的にこたえてきた・・・
もう親に土下座して田舎に帰って親のすねでもかじろうか悩んでいた。その時だ。ケータイに一軒のメールが入った。
内容を見て俺は歓喜した。
東西南北 キター!という感じであろうか。とにかく来たのだ。
「木村様
この度は弊社採用面接への応募ありがとうございました。厳選なる審査の結果、貴方は弊社の中途採用に合格しましたのでお知らせします。後日入社に関する書類を郵送させていただきます。入社説明会までにご記入の上当日ご持参ください。
アルファバス株式会社」
他からは祈られてばかりの俺がやっと受かったのだ。ひとまず無職にはならずに済んだ。いやーよかったよかった。
アルファバス株式会社。東京に本社を置くアルファ不動産グループの会社で社名の通り主に路線バスと貸し切りバスを運行している会社だ。車両台数は東京都交通局や私鉄系のあのオレンジ色のバスと比べると少ないがそこそこ大きな会社だったはずだ。
さてたしか俺はこの会社の総合職枠で応募したはず。中途なのに総合職があるのは珍しい印象を受けたので覚えている。それで給料はほぼ前の仕事と変わらなかったはず。これは大きかった。が罠があるかもしれん。
まあいい。とにかく決まったのだ。今夜はぱーとやろう。
そう思い俺は一人でビールを開け、祝賀会をしていた。
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