二人だけの誕生日
冴えないオタク
第1話
時系列は小説本編終了後の倫也と美智留の誕生日前からの一幕です。
「もしもし、倫也くん家、帰れそう?」
「いや、終電のがして今ファミレスで美智留とこれからどうしようかと、話しあってます。」
「あ〜っ加藤ちゃんこんばんは」
「こんな感じです。はい」
俺は過去最高の申し訳なさそうなトーンで現状を報告する。
「ふぅーん、それでどうするの。明日はデートに行く予定なのに間に合うの?」
それでも、彼女の機嫌は直るどころか美智留の声を聞いてさらに悪くなったのか、痛いところを突いてくる。
昔から上手すぎるんだよなぁ、人の痛いところを突くの。
「それはもう始発で帰ってすぐ行くから許してくれよ〜」と情け無い優柔不断主人公かのように頼み込む。
「了解、もうわかったから良いよ。でも氷堂さんと何もないようにしてね。」
「いや、何もないから、あいつはイトコ!」
「でも昔好きだったみたいなこと言ってなかった?」
「それは小さい頃だから!もう切るぞ」
「わかってるって、じゃあまた明日ね」
俺を一通り苛めて満足したのか、恵はカラカラと笑いながら電話切った。
「で〜どうする〜トモ。」
「俺1人ならここで夜を明かしても良いんだけど、流石にお前がいるからなぁ。」
「それにライブやら、打ち上げやらで疲れただろ。」
そう言うと、美智留はキョトンとした顔でこちらを見てきた。
「トモってそんな気遣い出来たんだねー。成長したな、うりゃー。」
「お、おいって とりあえずここ出よう。」
ファミレスの会計を済まし外に出ると、もう12月肌を刺すような寒さが体を襲う。
「うわぁさっむ。これは早く建物の中に入らないと死ぬー」
「ねえトモ、もうさー飲み屋にでも入らない? 晴れて私たちお酒飲めるようになるんだし。」
サークルのメンバーで温泉合宿に行った時のようにならないか心配だが、もう二十歳になるわけだし大丈夫なハズ!と言うかそう思いたい。
そんなことを考えながらも「行くあてもないしそうしようか」そう言いながら繁華街のほうへ二人で歩いて行った。
「あ゛〜暖かい。何か頼もう」
そう言い美智留はとんでもない数の料理を頼んでいく
「お客さん、二十歳超えてるの?」
確かについさっき二十歳になったのだから、そう見えても仕方ないよなぁ
「二人とも今日が誕生日で、ついさっき二十歳になったんです。」
それに納得したのか、店員さんはおめでとうと一言言い厨房に戻って行った。
料理が来ると二人ともお腹を空かせていたので、無言で食べ続けていた。
それなりに腹が満たされたのか、美智留が話しかけてくる。
「そういえばさ、二人だけで誕生日迎えたことあったよね?いつだったかな〜」
「小学生の高学年ぐらいじゃなかったか?確か」
「そうそう、思い出した!あの時のトモはかっこ良かったんだよー」
そう言って思い出話を始めた。
この年は珍しく両親が旅行に行かなかったとかで俺と美智留の誕生日に合わせて少し、いやかなり早い冬休みを迎えようと、安芸家と氷堂家のメンバーで新幹線に乗り長野へ向かっていた。
「ねえ、何読んでるのさトモ〜遊ぼうよ」
「どうせ向こうで何日も遊ぶんだから、良いじゃんみっちゃん。これくらい読ませてよ!」
「ごめんねえ、美智留ちゃん。この本、お友達からお誕生日にってことでもらった本らしくて、帰ったら感想言うんだって張り切ってたから読ませてあげてくれる?」
そう母さんが言うと、みっちゃんがキランと目を輝かせた。
「へぇー、トモに友達なんていたんだー。どんな子なの?ねえ」
俺が黙っていると、母さんが仕方なさそうに
「英梨々ちゃんって言う金髪の女の子でねーとっても可愛いのよね、倫也」
なんだって、女友達についてみっちゃんに説明しなきゃいけないんだ。しかも可愛いだなんてそう思った僕はどもりながら「ま、まあ」としか言えなかった。
それを勘違いしたのかみっちゃんは、
「ふーんそう、つまんない」と言い寝てしまった。
※長野弁がわからないので、わかるよーという方は脳内補完お願いします。
新幹線を降り、バスに揺られ、ついにおじいちゃんおばあちゃん家に着いた。
「トモくーん、美智留ちゃん、良く来たねー!」
「こんにちはーおじいちゃん、おばあちゃん!」
「こんにちはー」
荷物を運びが済み、外に出ようとしたところでおばあちゃんから声をかけられる。
「二人とも、遊びに行くのはお昼食べてからにしなさい
「「はい!」」
「おばあちゃんの料理美味しいね、みっちゃん」
「うん、そうだね」
「お口に合わなかったかな?」
「いやいや、美味しいよ!ちょっと疲れちゃっただけだから。」
「そう、なら良かった。」
この時のみっちゃんは確かにおかしかったんだ、それに気づいていたのに...
お昼を食べて、おじいちゃんとおばあちゃんとお話しをして、お昼寝をして、元気になったように見えたみっちゃんと山のほうに遊びに行った。
今までだって、みっちゃんは僕のことなんか考えずに進んで行っていたけれど、今までのものとはどこか違っていた。
いつもなら、
「ねえ、待ってよ、みっちゃん!」そう言うと「仕方ないなぁ、トモは」と言って待ってくれたのに。
チカラを振り絞って追いつく、
「どうしたの、みっちゃん?これ以上行ったら道わかんなくなるよ」
「うるさいっ、どうせあんた英梨々って娘が好きなんでしょ」そう言って泣き始めてしまった。
なんとかなだめて、ことの顛末を聞くと。僕が英梨々のことが好きになって、遊んでくれなくなるんじゃないかと思ったらしい。
「英梨々のことは好きだけど、その、なんて言うかそういう感じじゃなく......て」
「もう良いよ、トモ。私は大丈夫だから。それより帰る方法を考えよう」
「やっぱりわかってなかったんだ!どうしよう」
二人で何時間も山をさまよっていると、道路が見えて来た。
でも、小学生の体力ではそこまでが限界で、帰れそうになった安心感からか寝てしまった。
もう星が出て、すっかり寒くなり目が覚めた。
気づくとみっちゃんと身を寄せ合って寝ていたと思うと恥ずかしくなってしまい、彼女を起こした。
「ねえ、トモごめんね。」
「良いよ、僕も悪かったし」そう僕が言うと、彼女は首を振り、こう言った。
「そうじゃなくて、私ね、トモとこうしてお誕生日を迎えられそうなのが嬉しいの。だから、それに対するゴメン」
そう言った彼女は今までどうりのカッコよくて、僕の好きな彼女の
結局この後、捜索してくれていた警察が見つけてくれて、一件落着となりいつもより長い冬休みをいつもよりドギマギしながら過ごすことになった。
「ごめんね〜トモ」
「これもマネージャーの仕事かはわからないけど、仕事だし仕方ないから良いよ」
「そうじゃなくてー、私今ね、トモと私の誕生日を二人だけで、加藤ちゃんの居ないところで迎えられたことを嬉しく思っちゃってるんだ。だから、そのゴメン。
そう笑顔で言った彼女の
イトコヒロイン強し、そう思わされてしまう誕生日だった。
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二人だけの誕生日 冴えないオタク @saenaiotakudesu
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