ハッピークリスマス

あわやまたな

いざ悪霊退治へ…

俺の名前は木村 北労(きむら きたろう)。

福岡県在住だ。

親は強盗に殺されたので実質1人暮らしだ。

ちなみに今日は2018/12/6(木)である。

今年の冬はあまり寒くないな。

地球温暖化が進んでいるのか、もしくは俺という存在が今まさに燃えているからなのか。


ピンポーン


間抜けな呼び鈴が家中に響き渡る。

その静寂を断ち切るかのようにザザッと重い腰を上げ階段を降りて玄関へ向かう。

早朝からいきなりなんだ?

今日は学校あるんですけど?


ガチャ


友人の数野 一二三(かずの ひふみ)がいた。

相変わらずロン毛で視線が鋭い。

「トリック オア トリート」

数野が言った。

は?

「おい数野。今はハロウィンじゃないぞ。」

数野は顔をしかめて叫んだ。

「お前は何もわかってない!

旧暦は新暦よりも長く使われてきた…

つまり殆どの悪霊は明治時代初頭まで日本で使われてきた旧暦を基準に動いている。

だから旧暦の10月末である今、12/6こそが真のハロウィンなのだ!」

「ななな何だってー!?」

「今年の渋谷ハロウィンの悲劇を見たか!?

トラック横転、ゴミの散らかりようを!

真の日本のハロウィンはこの比じゃないぞ多分!

今度は日本が東西に分断され滅ぶぞ!」

「もしかして俺が毎年クリぼっちなのも真のハロウィンから悪霊に取り憑かれっぱなしなせいなのか!?」

「当たり前だ!」

「早速滅ぼそう!」

外に出た。

「数野くん、その様子だと説得は終わったようね」

棒立ちした端正な顔立ちの巫女がそこにいた。寒そう。

目は細く糸目ではない。

黒髪の俺たちとは違い、すみれ色の綺麗な髪だ。下半身はガクガク震えている。

スカートに隠れて見えないがきっと脚がガクガクしてるんだろうな。

「木村くん…だったわね。

人手が足りなくて困ってたの。

悪霊退治に協力してくれるのね。」

「えぇ、勿論。

俺は正義感が割とあるほうなので」

「じゃあ、ここに名前を書いてくれるかしら、登録に必要なの」

なるほど、これに名前を書けば悪霊退治の能力が手に入るのか。


書いた。

氏名 木村 北労












巫女「クックック!

まんまと騙されたようだな!

貴様が記入したそれは借金の連帯保証人承諾書だ!

貴様には借金5000万円を肩代わりしてもらう!」

俺(木村)「巫女ァ、貴様ァ!!!!!

数野!これはいったい…」

数野「クックックック!

俺の分の借金、5000万円も肩代わりしてもらう!」

俺「お前もグルか!

しかし俺は一枚しかサインしていない!

お前の分にサインした覚えはないぞ!」

数野「巫女の承諾書と俺の承諾書の間にカーボン用紙を挟む事で貴様のサインを写し取っておいたのだよ!

これで貴様の借金は…

_人人人人人人人人人人人人人_

> 5000万+5000万=1億円 <

 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄

だ!」

数野・巫女「「素敵な借金ライフを!」」

2人は唖然とした表情を浮かべた俺を尻目に俺の視界から消えた。


————————————————————



約3週間早く届いたクリスマスプレゼントは1億円の借金だった。

悪霊なんて話を信じた俺が馬鹿アホドジ間抜けだった。

真の悪霊はあいつらだった…


数野は翌日から学校には来なかった。

姿をくらます為に学校を辞めるのは当然だろう。


俺は学校を休んだ。

引きこもり外出もしなかった。

そして人生17度目のクリスマスイブがやってきた。

ふらふらと外に出た。

サンタさんいないかなぁあはははは!!????????

狂った。いやあの日から狂っていた。

もうこの寒さで手足が痺れ、動かなくなり野垂れ死んでしまえば良い…

むぬぬぬふらふらほら死神さ、おいでよ


ドン!


誰かにぶつかった。

赤い服を着て白ひげのデブだ。

「サンタクロース?」

「似てはいるが少し違う…

俺は“サタンクロス”だ。

サンタとの唯一の違いはプレゼントではなく死を与える事…

ちなみについ数十分前に脱獄してきた所だ」

「死を与える…

だったら…

なら…

俺を殺してくれ!

借金を1億円も肩代わりさせられたんだ!

もう生きる希望もないよ…」

「復讐をしたくないのか?」

「出来たらしたいがお前は殺人鬼だろ?

殺し以外もするのか?」

「俺は何も殺す事だけが趣味な訳じゃない。

社会的に死を与える事も好きだ。

頭を捻るから対象を陥れて社会的死を与えた時の快感は並みのものじゃないさ…」

「じゃぁ、俺復讐するよ!

協力してくれ!」

「その調子だ。」

そう言うと彼は薄汚れた袋をどこからともなく取り出した。元は白かったに違いない。

「俺は元はサンタクロースだった。

だからこの魔法の袋で好きなものを取り出せる。」

そう言って彼は袋をゴソゴソして数枚の紙を取り出した。

「この2枚の紙が巫女と貴様の友人だった男の住民票だ。

そしてこの2枚がやつらの自筆の名前だ。

筆跡を真似しろ」

「なるほど、これで連帯保証人承諾書に筆跡を真似して名前を書いて住民票の住所も丸写しすれば良いんだな!?」

「その通りだ。」

「手口はこの連帯保証人承諾書を使って


1. 別の所で1億円を借りる

2. 1.の金で肩代わりした借金を返済

3. 1.の借金を逆に押し付ける


って事でいいんだよな!?」


「ああ」


「早速1億の借金を送り返してやるぜ」

「復讐だろ?それ以上負担させてもいいんじゃない?

どうせなら一生遊んで暮らせる額をな!」

「そうだな…手取り1京円くらいあれば生活には困らないか…

あいつらには5000兆円ずつ借金負わせてやるぜ!」

「その調子だ!

お前にも生きる為の希望が見えて来たようだな!」



 俺は早速1京円を借りた後、住所を変更して姿を眩ませて、あいつら2人に5000兆円ずつ借金を負わせる事に成功した。


クリスマスイブの昼間に貰った少し早めのクリスマスプレゼントのおかげだ。

ありがとうサタンクロス。



 しかし、2019年2月14日木曜日バレンタインデーに悲劇は起きた。


豪邸で豪遊していたところ、スーツ姿の3人組がやってきた。

家に上げると

「借金を返せ

利息を含めて

_人人人人人人人人人人人人人人_

> 5000恒河沙円返済しろ! <

 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄

今すぐに返せなければ殺す!」

と言われた。

何だって!?

「そんな…姿は眩ませたはずなのに!」

「貴様の借金を肩代わりした数野と巫女の家に行ったのだがな、そいつらは何者かに殺されていた。


そんな時、サタンクロスと名乗る恰幅の良い男から住所を教えて貰ってな!

それがお前の家だよ!」

「くそっ、サタンクロスの野郎、ハメやがったな!

俺もあいつの愉悦の1つに過ぎなかったという訳か!」

「5000恒河沙円払えないのなら死ね!」

俺は3人組にリンチされ死んだ。


うまい話など存在しないし、悪意を持った人間が一番恐ろしいのだなと薄れる意識の中で思った。

この教訓が来世で活かせたら良いな。


Happy End.

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