第22話 チーム作り

チームとして存続させるには、あと1名入部してもらう必要があったが、その一人がなかなか見つからない状況が続いていた。


実は、あの屈辱的敗戦の後、コーチから呼び出されていた。

デビュー戦で、僕が泣いていた事が、よほど気になっていたらしい。


「かなた あの試合は、俺の采配ミスだ」

「第3クォーターで、すすむを下げて、お前を出すことを決めたのは俺だ」

「だから、あの試合の負けは、気にすることはないぞ」


コーチはそう言って、自分の采配ミスによる負けなので、僕が泣くような話ではないと言ってくれていた。

しかし、僕としては自分の力不足で負けたと思っていたため、


「コーチ あの試合は、僕がボールをフロントコートまで運ぶ技術があれば対処出来ました」

「だから、僕の責任だと思っています」

「あと、チームとしてパス&ランの形が出来ていなかったので、ボールを受けてからパス先を探すのに時間がかかり、ディフェンスに詰め寄られていたのが敗因だと考えています」


コーチは、ただの負けず嫌いで、泣いていたのだろうと思っていたため、その適格な分析と回答内容に目を丸くしていた。

そんな事もあり、その後コーチと色々話をすることになり、信頼関係は、より深まっていた。

それからは、戦術や練習メニューに対して、コーチと相談しながら一緒に考えるようになっていった。


とは言え、僕はまだ5年生のため、コーチに提案だけして、コーチからキャプテンの明くんに指示を出してもらい、キャプテンからの指示で、動くような形を取らせてもらう形にこだわった。

これは、宝珠対策でもある。

ループ前の高校生までに身につけていた経験の、為せる技と言ったところだ。


負け試合の対策として、パス&ランを体で覚えるため、二人で横に並んでコートのエンドラインから向こう側のゴールに向かって、ドリブル無しで、パスしながら前に進んで行き、最後にランニングシュートをするという2メンの練習に時間を割いていた。


この基本動作は、本当に大事で、パスをもらって、走れるのは2歩までなので、その短時間で、次のパスの動作をしなければならない。

しかもそのパスは、一緒に走っているパートナーの走りを止めないよう、走って来るはずの前方の位置に、正確に出さなければ成功しない。

練習に集中するために、ゲーム要素を取り入れ、制限時間を設けて、その時間内に連続でシュートを10本決めるというルールで行った。

これが、意外と難しい、全員で行うため、シュートが苦手なメンバーがいるとそこで、連続記録が途絶えてしまう。


「ナイッ シュー 1 ナイッ シュー 2 ... ナイッ シュー 8」

「あ~~ ドンマイ」


シュートを外すと、また1から数えなおしだ。

時間切れで、達成出来ない場合は、罰ゲームとして、5往復のダッシュを実施していた。

みんなで数を数えながら、全員で10本連続成功という目標に向かうことで、成功しても失敗しても、チームの一体感を高める効果があった。

かつ、個人スキルUPとして、試合中の、外せないプレッシャーがかかる、大事な場面で、チームのために決めるという状態を作り出す効果も発揮していた。


9名での練習を続けていく中で、練習試合を申し込まれることがあったが、事情を説明して、お断わりするか、助っ人として相手チームからメンバーを一人借りて試合をするような感じで過ごしていた。


このミニバスケットの10名縛りのルールは、少子化の時代に合わなくなっており、あおりを食らったチームは、廃部を余儀なくされ、隣町のチームに統廃合されるような事態が発生していた。

存続できなくなったチームのメンバーは、バスケを続けるために隣町のチームに入ることになり、送迎等の負担が親に重く伸し掛かっているようだ。


幸い、僕のチームの不足要員は1名なので、統廃合の対象とはなっていなかったが、公式戦には出場できない状況が続いていた。


そんな状況を心配して、中学に上がった元キャプテンの進くんが練習に顔を出してくれていた。

新キャプテンの伊藤くんに、こんな話を持ちかけてくれていた。


あきら 人数合わせだけってことなら、弟の大志はどうかなぁ?」


大志くんは、卒団式で「乾杯」をお父さんと歌っていた2年生だ。

練習には、ちょくちょく遊びに来ていたから、顔はよく知っている。

しかし、僕と同じように背が小さく、パスを受けると吹き飛ばされそうな感じの弟くんだった。


あと、うちのチームの決め事で、ケガの心配や指導者不足の観点から、3年生にならないと入部出来ないことになっていた。

チームの存続がかかっているため、そんな決め事は、撤回してもらうことにして、なんとか頭数の10名を揃えることが出来た。


しかし、10人目のプレイヤーは、初心者の2年生である、ミソッカスだ。

ケガをしないよう、コートの端に1クォーターの6分間だけ、立ってもらうだけってことで、元会長に入部の了解をもらったようだ。


とはいえ、試合に出ることになるため、チビ仲間の僕が指導することになっていた。

基礎としてドリブルとパスを根気よく、丁寧に教えた。

しかし、2年生なので、基礎練習程、つまらないものは無いということで、


「かなた~ つまんない 帰りたい~」


口癖のように言われて、練習を投げ出されていた。

なるべく楽しんで練習できるように、あの手この手で、メニューをアレンジして教えたが、小学2年生は、難敵でした。

まぁ、利き手でのドリブルと、パスくらいは出来るところまでは、成長してくれていた。


こんな感じで、チーム作りもなんとか進み、新チームとして形が見え始めた頃、コーチからリベンジマッチの提案があった。


断る理由は、見当たらない。

そうじゃなくて、リベンジしたい。勝ちたい。

今の僕達であれば、準備出来ている。

勝算は、十分ある。


二つ返事で、OKして、試合を申し込んでもらっていた。


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