桃栗アイスケーキ
魔法の練り物
第1話
私は相須桃子。"ももこ"ではなく、"とうこ"である。絶対に最初にももこと呼ばれるので、毎回全身全霊を込めて訂正する。それこそ、相手が「も」という音を発した瞬間、いや、唇をくっつけてマ行の音を出す準備をした瞬間に、「ちがう!トウコ!」と口を挟み、両手で相手のほっぺたも挟みに行く。桃饅頭のようなほっぺたを、パアン!と潰して、「トウコです!よろしくお願いします!」とにこやかに自己紹介をする。
……というのは、頭の中の私である。頭の中の私は、ちゃんと毎回ウルトラスーパー全身全霊で訂正してる。何個も桃饅頭を潰したし、元気に自己紹介もした。ただ、現実の私は、間違った響きに心底むずむずしながら、ちょっと不機嫌そうな顔で、「とうこです……」とボソリと呟くだけだ。
頭の中の私はエンジン全開でいつも銃弾のように脳内を走り回るくらい元気いっぱいなのだが、現実の私はえらく省エネ人間で、呼吸して食べて歩いて寝るだけで全エネルギーを消費している気すらする。脳内の私と外側の私にギャップがありすぎて、自分でも最初は戸惑っていたが、最近では脳内の自分を飼い慣らすことに慣れてきたところだ。何か困ったことがあると、頭の中のトウコに相談することもできるようになった。
そして今、ウルトラスーパー困ったことが起きている。
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