第37話 領域ー秘密の部屋の秘密③ー
ケンシは私の目をしっかり見てもう一度言った。
「俺はユウトを止めたいと思っている」
ケンシは少しだけ様子を伺うようにマリの方に視線を動かしてから付け加えた。
「マリも」
ちっとも話を聞いているように見えなかったマリも小さく頷いた。
「あいつは人を探してる」
「人探し?」
ここで?それをなぜ止める必要があるのだろうか?
「ガーディアン、て呼ばれてる」
「ガーディアン?」
バカみたいに言葉を繰り返すだけの私を見て、ケンシがちょっとだけ鼻で笑う。いつものケンシらしさが戻ってきてなんとなくホッとする。
「この世界の維持管理者、まぁ、管理官たちのトップみたいなもんだよ」
「なんでその人を探してるの?」
ケンシが少しだけ唇を噛むようにしていいよどむ。
「ここにずっといるため」
マリが口を挟む。
ガラス玉のような目がキラリと輝く。
「私に代わってここにずっと残れるようにしてもらうためよ」
マリの言葉にケンシが諦めたようにうなずく。
「ここがどこなのか、マリを見て気づいたって言っただろ」
そう言ってマリをふりむく。マリはもうケンシの言葉が聞こえていないかのようにさっきまでと同じようにPCに向き直っている。
ケンシがマリのPCを覗き込み、私を手招く。
覗き込んで、思っていたよりもOld typeのネットワーク画面に驚く。
「図書館?」
ケンシが小さく頷く。マリのPC画面にはこの島にあったと思われる図書館の画面が表示されていた。可愛らしいLibrarianのキャラクターが「今日のおすすめ」として本を紹介している。
ケンシと先輩も昔はここに通ったのだろうか?
「素敵。ここまだあるの?」
私の問いかけに、ケンシはわずかに首をふった。そして、もっとよく見ろというようにPC画面に表示されているカレンダー機能を指した。10年以上も前の日付が表示されている。
「壊れてるの?」
「違う。直しても自動でこの日付に修正される」
ケンシがそっと画面に表示された遠い夏の日付を触れる。
「俺たちはずっと過去の日付の中にいるんだ」
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