第2話
「だいたいイエスキリストっつーけどな、お前。日本人がなんで海の向こうの善良おじさんの誕生日祝ってやらなきゃなんねェんだ? 日本人なら黙って炬燵で蜜柑でも食うか、晦日に備えて大掃除でもしとけや」
無事に友人のメガネが伊達と発覚したところで、座り直して議論に戻る。そう、俺は何としてでもこのいけ好かない伊達メガネを説得して、炬燵を獲得しなければならないのだ──一刻も早く炬燵でぬくぬくする為に……そして、狭い部屋のド真ん中で煌々と輝くツリーを見て、虚しい気分にならない為に。
「そうだね、先程の僕の発言はクリスマスの趣旨から少しズレていたかもしれないな──訂正しよう。クリスマスは
……人情の意味が微妙に違う気もするが、今重要なのはそこではないのでスルーだ。
「お前……今の、本気で言った?」
そう。
この発言は、幾らツリーを出すためだとしても耳を疑うものだった。特に、俺と伊達メガネにとっては。
「失敬な。僕はいつだって本気だ。口を慎み給え」
大真面目に言ってメガネを持ち上げる友人。
俺はいよいよこいつの正気を疑い、友人を問い質しにかかった。
「じゃあ聞くぞ。お前、一緒に過ごすその大切な人とやらはいるのかよ」
「…………」
「この時期になると光り始める風潮にある木々の間をキャッキャウフフと乳繰りあってる男女を見て、お前は虚しくならないってのかよ」
「…………」
「この時期のバカップル共に、恨みのひとつもないってのかよ──ッ!!」
俺の魂の叫びが、狭いダイニングキッチンで空気と食器を激震させる。ついでに俺のカップル共への呪詛が電球までもを点滅させたような気もしたが、よく考えたら数日前から切れかかっていたのだった。これが済んだら伊達メガネに買いに行かせよう。
「………………謝罪する。僕が間違っていた」
「素直なのはいいことだ、友よ」
ここぞとばかりに伊達メガネの口調を真似て、嘲笑してやる。いつも他人を小馬鹿にして見下したようなコイツの悔しそうな顔を拝めて、俺は非常に満足だ。
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