第157話 健康診断

「木曜日、健康診断になったから」

夫が私に告げたのは月曜日。

職場の健康診断。病院も決まっている。


「今夜八時以降は何も食べられないからね」

水曜日に言われるデバネズミ。

すっかり忘れていた。慌てて夕飯を出す。


健康診断当日。木曜日早朝。

「朝ご飯は何にしようか。目玉焼きでいい?」

「……水も飲めないの!」プチ怒の夫。


すっかり忘れてた。バリウム飲むんだった。


私はこの年までバリウムを飲んだ事がない。

幸いな事に胃が痛くなった事がない。


お腹空いてるよね。私も朝ご飯抜くね。

いや夫が出掛けたら食べよう。


ルーティンの朝ドラを見る。夫も見る。

オープニング曲の間、昨日までの流れを話す。

よりによって今日はピンチ。

船が戻って来ないね。

暗い空気の中、病院に向かう夫。

再検査とか嫌だものね。なんかごめん。


お昼前に帰って来た。

「お腹空いたでしょう。お粥にする?」

「胃痛じゃないから何でも食べられるんだよ」


知らなかった。知らなかった。作ってない。

昨日のカレーの残りでいい? 

カップ焼きそばなら五分です。


ダメダメなデバネズミに夫は優しい。

カップ焼きそばでも怒らなかった。笑


「ねぇ、バリウムって何味だった?

チョコレート味とかバニラ味ってあるんでしょう?」


興味津々で聞いてみる。

いちご味とか抹茶味もあるのかな?


「今日のは栗の味がした!」


秋だからですか? いいな。

季節限定ですか? いいな。

マロン美味しそう。羨ましいな。

私も飲んでみたいな。


夫がクスッと笑った。

もしかしてからかわれた?!

本当はあるの? ないの?


夫の健康状態よりそっちが気になる。


私はウソをつかれてるのかしら?

何でも信じるデバネズミ。

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