第138話 クノイチ

「わぁい、ふふふ。嬉しいな」

「なんで一人で笑ってるの?」

「これ見て。私をイメージして描いてくれたんだって」


夫にイラストを見せる。ふふって笑っただけ。

そうだよね、どこが? だよね。けど嬉しいデバネズミ。


今から三十年以上前、私はクノイチに憧れた。

そう、忍者になりたかった。

正確にはアクション俳優だ。

当時流行っていたテレビの影響。

千葉真一が忍者になってた番組 

「服部半蔵 影の軍団」

クノイチになって出たい。志穂美悦子みたいになる!


その為には何をする? 若さは無謀。短絡的思考。

ジャパンアクションクラブに入ればいいじゃん。

真田広之、堤真一を輩出したJAC 。武術必須。


思い立ったが吉日。空手道場に通う。

茶帯ならなんとかいいだろうろと履歴書送付。

詐欺みたいな写真貼って送付。親に内緒で送る。


一次審査通過。まっ、誰でも通るんでしょうけど。

二次審査はもちろん東京。服装、体育館シューズ持参、

日付指定が書いてある封筒が届く。


日付を見て悩む十七才。簿記の試験日と同じ日だ。

親に話したら反対された。

簿記資格とって地元に就職しなさいと叱られた。


クノイチになる夢が儚く消える。意志の弱さを後悔。


あれから三十年、忍たまの山田先生女装時に親近感

を持ってきたデバネズミ。姪っ子曰く似てるらしい。


これからは、私、ともはっとさんのおかげで

キレイなクノイチです。やっとなれたんです。

感謝感激デバネズミ。


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