第90話 好きになりたいな
「今なら大丈夫だよ、塗ってあげる」
こそこそ言うデバネズミに
「何を?何を塗ってくれるの?」
と、お風呂上がりに首をかしげる夫。
私は、今から30年前の独身実家暮らしの
両親の意味不明な行動を思い出していた。
「おっかさー」「今行く」
母を呼びつけ、父はこそこそ部屋に入る。
ふすまを閉め切り、三分で出てくる儀式。
何をしていたのか、分からなかった。
結婚して里帰りした時に、事実を知る。
「遠慮しなくていいよ。いつでも言って。
私ね、結婚して25年だから出来ると思うの」
自信たっぷりデバネズミ。
これまで夫が憎たらしいと思うと
気持ちを切り替えるため
金子みすゞの詩を当てはめてきた。
『私は好きになりたいな ネギも夫もお魚も』
夫に暴力をふるわれ、性病を移されても
金子みすゞは『みんなを好きになりたいな』
って書いた。よし、私も頑張れそうだ。
夫もそろそろだろう。きっとそうだ。
仕事柄出来ているに違いない!
愛があれば何でも出来る。夫を呼びつける。
『明るい方へ』と蛍光灯の下で……。
『みんな違ってみんないい』と説得しながら。
夫のパンツに手をかけるデバネズミ。
「やめてくれる(怒)まだ痔じゃないから(怒)
痔になっても自分で薬塗れるから(怒)」
なんですと~‼夫婦なのに?自分で塗るの?
ボラ◯ノール片手に途方に暮れるデバネズミ。
「ばか」っていうと「ばか」っていう。
「ごめんね」っていうと「ばか」って言われる。
こだまじゃないね。残念すぎるデバネズミ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます