第82話 趣味嗜好

「ヤマンバギリクニヒロ、ほー安土桃山かぁ」

 戦国時代のイケメンパラダイスだと

 友達から借りたDVD鑑賞後の独り言。


「あなたの趣味はなんですか?」

 何度も聞かれた質問を振り返る。

 

 読書です。特に百科事典大好きです。

 バレーボールです。アザ作るの大好きです。

 空手です。人殴る真似が……楽しいです。

 作詞です。演歌の歌詞書いて自分も泣きます。

 刺繍です。派手な色がキモッって言われます。


 体を使うもの、人と接するもの、

 孤独にコツコツ取り組むもの。

 動くものから、動かないものへ

 趣味嗜好が変わる。


 イケメンが刀剣になって戦国武将と戦う。

 イケメンよりもときめくものを見つけた。


「ヤゲントウシロウ、鎌倉時代の刀なのね」

「斬るふりをしただけで、相手の骨が、骨が、

 砕けたぁ~怖いんですけど、ホネバミって」

 

 宝石も時計もバッグも興味がないデバネズミ。

 日本刀の美しさに固まる。


 年を重ねると石や盆栽が美しく見えると聞く。

 日本刀に魅力を感じるデバネズミ。


「へし切り長谷部って織田さんが茶坊主を

 成敗した時に使ったのね。ふぅーん」

「天下五剣のひとつか、え~と、」


「お母さん、さっきから独り言うるさいんで

 すけど。クサメノヘガデタってなぁに?」


 クサメノ……クサメノヘッ?デタ?

 そんなこと言ってません。何の告白ですか!


 ミカヅキムネチカって言ったんです。


 滑舌悪いんだね。ごめんなさい。

 名刀に謝るデバネズミ。

 

 

 

 


 

 

 

 

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