第55話 捧げよ!

「その歌、何?」娘の怪訝な顔。

 口ずさむ歌が怪しいらしい。

「小さい頃ね、モモレンジャーになり

 たかったの。緑の地球を守るため、

 命を捨てるんだよ!今はね……」

 

 夢を語り出すデバネズミ。

 夫も娘もまともに聞いてくれない。

「立体機動装置をつけて闘うの!」

 意味不明な発言にあきれている。


 戦闘ヒーローは目標を持って、

 力と技を研き、団結して闘う。

 愛するものの為に命をかけて。

 モモレンジャーに憧れたのは

 そんな生き方に血が騒いだのだ。

 

 8050問題。50代の子と80代の親。

 引きこもりの人にとって特に

 恐ろしい現実問題だろう。


 自分の命をかけて、守れるものが

 ない?いやあったかもしれない。

 裏切られる事に臆病な世代。

 親に守られてきた世代。

 努力が報われず、すぐ諦める世代。

 エイリアンが地球を襲ったら、

 地球を守るために、戦えるのか?

 

 戦時中は更年期障害などなかった

 という。生き延びる為に必死だ。


 命さえ……魂さえ……決して

 惜しくなどない。捧げよ!

 捧げよ! 

 

 誰かに、何かに心臓を捧げたい。

 

 

 

 


 

 

 




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