第52話 麻痺とネフィリム

『お前はもう死んでいる』

 衝撃的なセリフのアニメに震えた20代。

「ぎゃーっ、怖い!血が出てない!」

「見るなら静かに見て」弟の注意。

 回を重ねる毎に涙、感動。

 暴力シーンの先に勇気や愛を感じる。


『加藤さん、事件です!』朝の情報番組に

 見覚えのあるクラスメートの卒業写真。

 夫に首を絞められて殺された。30才の衝撃。

 中学の親友が脳溢血で急死。33才の涙。

 慕っていた従兄が焼身自殺、35才の落胆。


 そして……この頃は身近な人の死を

 静かに穏やかに受け入れられる私がいる。

 

「巨人の出てくる漫画知ってる?」

「知ってるけど見たことない。触ったら

 痛そうなむき出しの皮膚のでしょ?」

「そう、でねその巨人、ネフィリムより

 恐いの。人間食べちゃうし、巨人同士で

 殺し合うの。獣の巨人もいてね……」


 興奮して娘に話すデバネズミ。

 残酷シーンに麻痺しちゃったのかな?

 ぎゃーっと悲鳴はあげない。

 けど……お母さんが腕だけになった息子の

 腕を抱き締めて泣くシーンと、子供を逃がし

 巨人に食べられるシーンにポロリと泣く。

 

 感情のどこかは麻痺して、どこかは正常。

 複雑な更年期に戸惑うデバネズミ。

 



 

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