第23話 誤嚥

「くっ苦しい。水を」苦しむデバネズミ。

「早く飲んで」背中をさする娘。


朝ドラの影響でインスタントラーメン、

あの黄色のヒヨコの細い麺が食べたくなった。

「三分どんぶりじゃなくて、鍋で1分に

すれば良かった。麺がかたいからだ」

「そういう問題じゃなくて、年だよ」


最近食べ物でむせる。ヒュッと何かの拍子に

気管に入る。

咳き込み、息が出来ない。のたうち回る。


誤嚥は老年になってからだと思っていた。

こんにゃく、バナナ、お餅は危険。

まだ五十代のデバネズミ、家族がそばに

いる時にしか口にしないもの。情けない。


恵方巻きなんてもってのほか。

口のまわりに海苔つけたまま救急車は

恥ずかしい。


「今年の方角はどこだったっけ?」

娘が聞いてくる。

「知らなぁい」お茶をすすりながら答える。


「あっ、そうだ! 南北東だった」

娘が大きな声で思い出したように言う。


「それどこやねん? どこ向いて食べるの?」


笑いながら突っ込むデバネズミ。


次の瞬間、お茶でむせた。

 

もう水分でも危険だ。


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