時は幕末。父親が牛鍋屋を開くと言い出したおかげで、庄助は結婚する予定だった綾乃に破談を申し出されてしまう。
困った庄助はあれこれ悩みつつ、綾乃に思いなおしてもらおうとじたばたもがくのだが……。
こちら、牛鍋を中心に据えた時代ものラブコメとなっております。
明治までがんばればもう少し楽だったでしょうに! と思わずにいられないシチュエーションですが、時代背景を取り込みつつ現代感覚をいい塩梅でブレンドした物語は明るくて前向きで――
来たる文明開化のにおいを感じさせてくれる仕上がりとなっています。
幕末ものといえば江戸の名残がピックアップされがちですので、この角度から切り込んだ作品というものはなかなかにありません。
そのレア度だけでも注目なんですが、時代変革の際で悪戦苦闘する主人公の庄助さんに悲壮感がないのも気持ちよく、安心して読めるところもいいんですよ。
時代ものが苦手な方にもおすすめしたいライトタッチストーリーです。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=髙橋 剛)