大地を捨てて:願いを叶える流れ星

@monosaki

第1話すれ違って置いてかれて

目に入るのは、赤褐色のゴムで作られた、何処までも伸びているトラックと、前を走る競争相手の壁だけだった。

本来見えるはずの、入道雲を描かれた青空も、グラウンドを囲む白い内壁も、内壁越しの風にそよぐ樹々も。必要のない情報は全て無意識が切り捨てて、俺を走る事だけに集中させてくれる。


速歩きから駆けっこのペースまで、脚の回転を引き上げる。折り曲げ、前へ蹴り出した膝を解放して、より遠くの地面をつま先で掴む。そして、蹴る。蹴って蹴って蹴って、ただ加速する。

引き締められた大腿が、体を前に押し出すことで、更に見える風景が変わっていく。

風景がビュンビュンと後ろに流れ去っていき、没入感と加速感を得たと思えば一転、スローモーションが如く、風景が鈍化して、より一層俺の意識は走ることに沈んで行く。

ただ脚を動かし地面を蹴って、目の前の情報だけを高速で処理する。トラック表面の様子。身に受ける風の向き。今の自分の体の使い方。障害物の有無。


次、次、次、次、次、と。


駆ける事で目まぐるしく変わる状況では、引いて自分を見ることなど出来ない。ひたすらに眼前を風景を認識しなければ、転倒しかねないからだ。だから、余計なことは考えてはいられないのだ。

其のはずなのに、考えてはいられないはずなのに、一度燻んだ思考は、ついつい頭の隅で余計な事を考えてしまう。自分が全力で走れず、別の事を考えるだけの余裕がある事をいいことに、意識してしまう。

例えば、自分の様に劣等感に蝕まれ、順位が気になってしまう存在ならば、他の走るランナーの事を考えてしまうのだ。





少し走るペースを上げただけでも、其の効果は明らかなものだった。

超えられない壁に様に存在していた、前を走るランナーとの距離を、ものの数秒で蹴り飛ばして、前に出て、追い抜ける。

「目の前の目障りな奴らを抜いた。やった!」と、追い抜き様に、抜かれまいと必死の形相で走る彼らを、涼しい顔で眺め笑って、俺は酷く幼稚で無意味な優越感を得てーーーー


ーーーー直後、猛烈な速度で”ナムルマティア:健脚人種“の一団に抜かれて、劣等感に苛まれた。


息を飲んだ。目を見開いて、瞳をぶれる様に震わせた。一瞬、湧いて出た矮小な歓喜など、絶望にも似た感情にすぐに押しつぶされた。

彼らは、俺の様に此方を嘲笑いなどせずに俺を追い抜かして行く。まるで人が歩く際に足元の小石や雑草を気にしない様に、此方など眼中にないかの様に、淡々と走って俺を引き離す。

勿論俺は追い縋ろうとした。

引き離されたくなくて、同じペースで走れると証明したくて、「嫌だ嫌だ」と駄々をこねる様に。悔しくてたまらなくて、「俺はここにいるのだ」と叫ぶ様に。

無意識に、脚の回転を、大腿の筋肉を、本気で走るペースまで引き上げようとした。


だが、其れは叶わない。筋繊維が凝縮し、加速しようと力を生み出すほど、関節や骨が悲鳴をあげる。

一瞬なら我慢できる痛みも、加速し続ければ、脚を焼く痛みへ変わっていった。

没入感が消えて、幻に溺れていた体が引き上げられる。現実を突きつけられる心地がした。

激痛で膝が崩れ落ちる感覚を味わい、俺は悔しながらも走るペースを落として、止まった。

先程追い抜かして嘲笑ったランナーが、立ち止まった俺を風切り音を纏って追い抜いていく。

彼らも此方を見ていなかった。


俺は、其れが奥歯を噛み砕くほど悔しくて、情けなくて、怒れて、今日もまた無力さを思い知った。



此の世界には、ナムルマティア、別名”健脚人種“という人種がいる。

ナムルが「草原を吹き抜ける疾風、また、疾風のように駆け抜ける人の様」の、マティアが「人種」の意であり、旧人類が自らを品種改良して造った人工人種であった。

造られた目的は一つ、生身でより速く走ること。ただそれだけを追求し続けた人種だった。

骨の内部構造を変形させ軽量化し、腰骨の左右を前後に拡張し、大腿から腰に伸びる筋肉の量を増やす。走る際の姿勢をつま先立ちの要領になるよう足の甲を延長して、つま先に蹄を形成させて、其れで、其れで。


確かに、ナムルマティアは速くなった。疾風の名に勝るとも劣らないほど俊敏になり、神速に迫った。


そして多様性を失った。価値観を、自由を、思いやりすらも、脚というプライドの為にあまりに多くのものを失いすぎた。


嗚呼、そうだ。ナムルマティアの中では、遅い者に意味はないのだ。遅いという事実で蔑視するに足るのだ。

なら、ならば、もう走れない俺は、どう生きればいい。何処を目指せばいい。



俺は部活動を終えて、そそくさと校庭を後にした。

部活動と言えば聞こえはいいが、実際は、ついても行けない走り込みに混ざっては、脱落して部室で不貞腐れるだけであり、全くもって無駄な時間だった。

其の時間を勉学に当て、もう程近くなった進路決めに心血を注いだ方が良いことも身に染みてわかっていた。だが、其れでも俺は過去の光景を捨てきれなかった。




斜陽が表面を削ぎ取る様に刺す、土手の上。陽が空を星明かりに譲りはじめ、蒸し暑い空気も心地よい程度に冷めた頃。俺は憂鬱な、行き場のない苛立ちを抱えて帰路についた。

茜色に染まった空を眺めて、其の眩しさとじき消えゆく儚さに、昔の自分を重ねて心を痛める。視線を落として、夕日を反射する川の水面を見ると、此れもまた、キラキラと風に吹かれて光り方を変えていて「薄汚れた自分が見るものじゃないな」と自虐にかられた。


振り向いて土手の反対側、土手が夕日を遮り影を作る方を見る。

其処には影に沈みゆく街があった。文明の光と自然の光を混ぜ込んだ優しい街に見えた。他国とは違う、人工人種であることに負い目を感じなくてもいい、寛容で受容的な、自由な街だった。人も感情豊かで柔軟で、外では直ぐに食い物にされてしまいそうなお人好しが多かった。

だからこそ、此の街を見ていると思うのだ。


そんな温和な街まで来て、そんな共和的な国まで来て、俺は、俺たちナムルマティアは何をしているのだろう、と。


俺を含めて、どうして皆脚に関するしがらみにとらわれ続けているのだろうか。もう従属からは抜け出して独立して久しいというのに、と。


答えは簡単で、俺自身よくわかっていた。変わる事が怖いのだ。未知に踏み出す事が怖いのだ。どんなに安全で平和な環境でも、しがみついて来たものは投げ捨てられないのだ。

地で歩いて来た生き物が、突然宙に投げ出されたらどうしようもない様に、自分の土台から何から全てを、投げ捨ててしまう事などできるはずもない。

自分を苦しめるだけの排他的で差別的な価値観でも、もう走れない脚でも、其れが俺の全てだったから、投げ捨てられるわけも忘れられるわけもないだろう。


俺はいつのまにか座り込んで街を眺めていた。自分を悲観し終わって、締める為に深くため息をついてから、スッと立ち上がって俺は帰路に戻ろうとした。

けれど、其の時、よく聞いた、けれどもう聞きたくなかった声に呼び止められた。

ああ、あまり顔を合わせたくなかったから、早めに部活を切り上げて来たのに、と舌打ちをした。其処其処の風もあった事から聞こえなかったフリをして去ろうとも思った。

だが、お節介な自律型支援デバイス“装備”に「無視とか最低の所業ですね。あなたが嫌う人々と変わりませんよ」などと言い咎められて、俺は渋々振り向いた。


其処には、いつも通り風船ガムを膨らませて、気だるげというか不機嫌そうにしている少女が立っていた。制服の上に男物のパーカーを重ね着して、ボーイッシュというか男勝りというか、なんとも言えない雰囲気だった。

彼女はつけていたイアホンをバックの中にしまうと、セミショートに整えられたマルサラカラー(赤みがかった明るいブラウン:イタリアのワインの色に由来)の髪に指先を絡ませながら、口を開いた。


「ツァガナ。まだ部活に来んの?足が治ってないならやめたら。続けていても辛いだけだし」


開口一番に嫌味かと、俺は顔を引きつらせた。

他人からこんな素っ気ない口調で、今のようなことを言われたら怒りを露わにしそうだけれど、彼女だけにはそう言われても仕方ないかと思えた。

彼女は昔から不器用で、強がりで、男勝りで、遅いものに強く当たる傾向があった。

きっと生まれた場所や育った環境が彼女をそうさせたのだろう、と俺は頭の中でぼんやりと憐れんだ。


彼女は「シューテ・フェルナムル」。シューテ、「流れ星」の意を持つ名に、フェルナムル、「優れた疾風」の意を苗字に持つ“本家”の一人娘にして、最も厳しく「速くあれ」と望まれ強制された幼馴染の少女。

“分家“である「劣った疾風」の意を持つイグナムル家の生まれである俺とは違う、明確な重圧を背負わされた、自由のない存在だった。


「......これはこれはナムルマティアの次期代表さまー。鈍足の私めに何か御用でしょうかー?」


彼女は呆れた様に首を振った。俺もばつが悪くて、すぐに目を伏せ、靴から露出した蹄で少し土手の砂利を踏みにじった。

怒りを露わにしない。彼女は仕方ない。などと大人ぶった事を思っておいて、実際自分の口から出たのは、挑発とも取れる言葉だった事が、速さに劣等感を抱えた自分を表しているようで恥ずかしかった。


「随分と荒んだね。昔ならもう少し割り切れた態度が取れただろうに。荒んだのは周りが悪い?走れないのが悪い?」


「.....それよりあまり俺とは話さない方がいいだろ。シューテの親父さんもその他親族もいい顔しないだろ。あとそんな服装してるとーーー」


「ーーーおせっかいはいいから。私の、質問に、答えて」


「.....はぁ。さぁ、きっとどっちもだろ。ああ、どっちもだ。どっちも悪い要因だよ」


片手で顔を抑え、表情を隠しながら空を仰いで、俺は自分に言い聞かせるようにそう答えた。


彼女が上げた要因が、今の自分に深く関わっていることは確かだが、一番の要因が其れらではないと自分ではよく分かっていた。ただ、其の事を彼女に悟られるのはきまりが悪くて、出来れば隠したいと思った。

だが彼女も、無自覚ながらもよく俺の事がわかっていたようで、自分の拙い誤魔化しなど意味がなく、シューテの発する言葉は核心を突き、酷く俺の心を突き刺した。


「.....ねぇ、そろそろ走る以外の道を見つけなって。確かに昔は速かったしさ。私よりよっぽど速くて、ぐんぐんと私を追い抜いて、それでも時々こっちを気にして振り返ってくれてりして。そりゃツァガナはイグナムル家だから。その分本家の私より周囲の期待は高かったと思うけどさ」


「やめてくれよ。そんなんじゃないって。やめろよ」


あいも変わらずシューテは間合いを取るのが下手、否、放っておいて欲しい所まで踏み込んでくるのは上手いのだ。撫でられるだけでも苦痛な現実を、ナイフで突き刺す様に目の前に突きつけてくる。

どうしてそんなことをしてくるのだろうか。本当に幼かった頃はもっと優しかったのに、などと、俺は無意識に失われた過去に想いを馳せる事で自分を守ろうとした。

だが、そんなことを御構い無しに彼女は次の言葉を打ち立てていく。


「さっきの反応でわかった。はっきり言っておかないとだめだってこと。もう走れないんだ。昔の光景は過去のものなんだよ。どれだけしがみついたって、またみんなが褒めてくれるわけじゃない!また走れるわけじゃない!」


「五月蝿い!黙れよ!んなこた分かってんだよ!分かってんだよ!分かってんだよッ!最も速いやつがゴタゴタいうなよ!なんだ、今まで前走ってた奴が走れなくなって満足か!走れなくなった奴が後ろにヘロヘロ付いて来て目障りか!はっきり言ってみろよッ!」


「全く違う!あーもうッ!本当に昔から大事なところは外してばっかり!本当に、本当に頭が硬い!周りは批判するのに自分の頭の硬さにはいつまで経っても気づいてくんない!」


シューテは吐き捨てる地面に叫ぶと、荷物を掴んで踵を返した。待てという暇も、手を伸ばす暇もないほど速く、彼女は土手を蹴り飛ばして離れていった。

追いかけた方がいい、と思った。でも追いかけられるはずもなかった。

彼女はナムルマティアの中で最も速い個体なのだ。今の自分に、腐っている自分に、追いつける相手ではなかった。


分かってないとはどういう事だろうか、一体何が分かってないのだろうか。シューテは此方をよく分かった口を聞くのに、俺はそうではなかったのだろうか。傷心を宥め、必死に抑え混む影で、煮え切らない気持ちがまた心に溜まっていく。

俺は、夏終わりの薄寒い風に吹かれながら、ただ猛烈な速度で小さくなる彼女の背中を眺め続けることしかできなかった。



呆れて、むしゃくしゃして、気まずくなって、自分でも自分の内心が分からなくなり、私は衝動の成すままに走った。

昔みたいにツァガナが軽々と追いついて来て、なだめる様に声をかけてくれることを心の何処かで期待して、走りながら待った。だが、彼が追いついてくることはなく、私たちの距離は両方の意味で開くばかりだった。


前からツァガナと話す機会を気が向くたびに探していた。彼が走れなくなってから、何に対してか突き止めることができない気に入らなさが、身体に纏わり付いて離れなかった。

其の気持ち悪さを振りほどくために、意を決して話しかけたのが、先程の事。

確信があったわけではないが、走り続けようとする彼を見る度不満さが増すので、今回の会話で何かが変わるのではないかとも思っていた。

たしかに状況は変わった。悪い方向に変わってしまった。


顔を見合わせて喉を震わせた時、今まで沼の奥底のへばりつく泥の様に不透明で扱いあぐねていた感情が明文化されて、素直すぎる形で口から飛び出てしまった。

怒らせるつもりも不機嫌にさせるつもりも、ましてや傷つける気などさらさらなかったのに、現実は酷く捻くれていた。


自分では、此の気に入らなさは、ツァガナが惨めに走り続けている事から来る苛立ちと心配が原因だと思っていた。

「痛々しくて、余りに思い切りがなくて、見ていられない」という感情からだと思っていた。

けれど、其れは間違いだった様だった。私が彼に強く当たってしまったことを考えるとこの感情はきっとそう言うのではないのだ。

走っている間に、明文化されかけた感情は元の泥に戻ってしまったが、彼よりももっと身勝手で、過去にしがみついているのは私も同じなのだということだけはよく痛感させられた。


「何で駄々こねてるかは分かんなくなっちゃったけど、昔のツァガナを今のツァガナに重ねて駄々をこねてたのは私も一緒かぁ....」


誰もおらず閑散とした砂場の端。遊具を避けるように植えられた植え込みの木々の下に添えられた、木製のベンチに片膝を立てて座って、私は独り言を口の中でかき混ぜた。

隙間を縫って刺す月明かりが、スポットライトの様に私だけを照らして、周囲から浮き立たせる。

木の騒めきに合わせて、何回か深呼吸をして神経を落ち着かせると、身体は夏の日暮れ時の肌寒さを思いしたらしかった。肩からズレ落ちたパーカーを引き上げて身に寄せた。

「そろそろ帰らなきゃなぁ」と太陽が大地に潜り、はっきりと輝き始めた星空を眺めていると、腰元からピピピッと通知を知らせる電子音が響いた。


「今のはなんの通知音?」


私は伸びをする様にベンチの背もたれに体重を任せて、私の左隣、闇以外何もいないはずの空間に声をかけた。返事を返す者が居ないように思えた宛先のない声。だが、其の声に反応して、声を上げる物がいた。


「失礼しました。その、シューテさんのお帰りが遅いと心配されたヴェーヌァさんから、再三位置情報を伝えるように連絡がありまして....」


私の耳元で申し訳なさそうに弁明を囁く其れは、歯切れ悪く言葉を紡いで、空中に淡い蛍火で半球面状のディスプレイを描き出した。

ディスプレイに青く波打つような紋様を浮かんだと思えば、調整が終了したのか、すぐに一般的な電子機器の画面へと変わっていった。描き出されたのは連絡用アプリケーションの通知画面であり、確かにそこは一時間ほど前から来ているヴェーヌァのメッセージ受信通知で埋め尽くされていた。

通知画面に続いて、ディスプレイに入り込んでくる、中心を同じくした大きさの違う何枚もの正方形で作られた、謂うなればトゲトゲのボールの様な物。其れは、画面を埋め尽くす通知を強調した後、私の目線の高さまでディスプレイを滑り上がって、うぞうぞと自らを構成する正方形を変形させながら喋り出した。


「見ての通りですから!シューテさんの位置情報をヴェーヌァさんに伝えた上で、一応プライベートの保護の観点から、伝えた事をシューテさんに通知すべく、鳴らしたのが先程の通知音でしてててててああっ。おやめください。本体に当たらないでください!希釈系精密機器は振動、水、過剰電流と過剰幻想に弱いと学校で習わなかったのですかかかか!!?」


私は飛びかかる様にして、ディスプレイ内の正方形の集合体、ではなく、腰の横にぶら下げていた、ウェストポーチ状の白く滑らかな精密機器を掴み上げて振り回した。

其れは、此の州国家内のみで使用される、俗に“装備”と呼ばれる自律型支援デバイスだった。連絡機能から、検索、スケジュール管理、体調管理、ナビゲーション。そして何より“希釈技術”というこの国独特の技術によって物理法則を“希釈”して、危機回避や肉体保護までやってのける優れものであり、同時に個人認証手続きに利用される貴重品でもあった。


「私は私のプライベートを勝手にダダ漏れにするAIを積んだ”装備“の扱いなんて習ってなぇ!後音源を耳元に置いて囁く様に喋るのやめてって前に言ったよね!!」


「落ち込んでいたので茶目っ気出しただけですっって!もう囁きませんから囁きませんから!?それにヴェーヌァさんを心配させるのはあまりに忍びなくてですね仕方ないかったんですよ!?寧ろツァガナさんの一件後落ち込んでる間ずっと黙ってただけでも....おうぇ....待ってく、加速度セン、サーがうぇぇ...」


“装備”を振り回していると、ディスプレイ内の“装備”AIのアバターである正方形の集合体がドロドロと溶け始め、最後には宙に揺らめいた光のディスプレイも闇へと溶け行った。

其れがただの演出であり実際は“装備”側に何の影響もないとわかっていても、私は多少の満足を得て溜飲を下げた。

振り疲れた腕から“装備”を投げ捨てる。“装備”は重力に引かれ、放物線に沿って地面に向かって加速して。

激突直前で不自然に急停止して損傷を免れた。

「慣性もベクトルも無視した動きはいつ見ても不可解極まりないな」と私は地面から数センチの距離に停止し続ける“装備”を拾い上げながら思った。

装備を腰にぶら下げ直し、荷物を全て背負い直して、私は“装備”に問うた。


「それで今は何時で、ヴェーヌァは後何分くらいでこっちに来んの?」


「今は21時を回った程度ですね。帰宅予定から2時間遅れ、心配されるには十分な時間です。ヴェーヌァさんは、そうですね。気にするほどでもありませんよ。なんせもう此方に到着するようですから」


「ええ、私は既に後ろに居ります故。お帰りが遅いので探しましたよ、シューテ様」


振り返れば、ニコニコと微笑んで、軽く会釈をする、優しげな女性が立っていた。全体的におっとりとした雰囲気を纏う其の女性は、其の容姿とは反対の薄く開かれた瞼から怒りの瞳を覗かせていて、


「ゔぇ、ヴェーヌァ.....結構早かったんだ...ね」


これは小言を言われるな、と私に直感させた。



「ヴェーヌァ」は所謂私の“お側付き”だった。私が4歳の頃、彼女はその優秀さから若干14歳にして私の“お側付き”になり、以来14年間ずっと仕えていてくれた。

“お側付き“になる人物は、大抵”主人“を世話をする事を好まないことが多い。凡そこんなお世話係になりたい人物は、権力を狙い本家とのコネを作りたい人物か、将又望まずして本家から任命され、個人性を封じ込められた人物だからだ。

けれど、其の事を踏まえれば、いや踏まえずとも、ヴェーヌァは際立って優れた“お側付き”だった。

彼女は受容的で且つ構いたがりな性格から、進んで世話事をしてくれたし、よく細かく気を遣ってくれた。勉学にも優れ、大抵の質問疑問には答えてくれた。

そして何より“常識”があった。ナムルマティアの感覚が、この国家で使われる感覚とは大分異なっている事を私に告げ、家の外でも立ち行ける様に私を指導し、其の結果外でも一般人らしく振る舞えたのは、偏に彼女のおかげだった。



私はヴァーヌァを付き添わせて家までの道のりを煮え切らない足取りで帰った。まだ心の整理が付かずブラブラと夜空を眺め散歩して居たかったが、早く私を連れて帰れと家から連絡があったのか、彼女は頑なに其れを許してくれなかった。

家路の途中、煌びやかな若者向けのショッピングモールを通り抜ける際、ヴェーヌァの小言はたわいもない世間話になった。

最初にしゃべったのは私だった。ショッピングモールの空中ディスプレイを見て脚をとめていた彼女に気づいてのことだった。


「どうかした?足を止めんなんて珍しい。何か気になるものあった?買ってあげよっか?」


「いえいえ、それほどの事ではありませんから!ただちょっと行ってみたいなぁっと」


そう言って憧れの視線で再び上を見上げるヴェーヌァにつられて、私も空中ディスプレイに目を見やると、学校のおしゃべりでも耳にするバンドのライブのコマーシャルがくり返し流されていた。


「心響音色...?へー随分と挑戦的な名前。ヴェーヌァああいうの聴くんだ。全然好みとか聞いた事ないし、無欲って思ってた。私があげたもの以外、私物ほとんどないし」


「私的なお金は一切ありませんし、お側付きとして邪念を持たぬ様にしてますから。それでも私も人な....いえ何でもありません」


自分にはすぎた事を言ってしまった、と急いで口を噤んだヴェーヌァの姿が、腑に落ちず、私はスリープモードになっていた“装備”を叩き起こして、その場でライブチケットを購入して、ヴェーヌァ側の“装備”に転送した。


「んじゃあこれあげる。最近暇をあげてなかったし、久々に“脚を解して”くるといいよ。上もヴェーヌァの働き見れば許可してくれるだろうし、文句は私が黙らせるから」


「わ、態々ありがとうございます。ではお言葉に甘えて....」


彼女は遠慮がちに笑ったが、其の裏に隠し切れない喜びがあるのは一目瞭然だった。

それからしばらくはヴェーヌァはその心響音色というバンドの話をしてくれた。ボーカルの人が人工人種ではないものの特異的な人種であるとか、本当の声色が透き通ってるだとか、一度ライブ行ってみたかっただとか。予想以上の饒舌になった彼女を見て、何故だか私はどこか少し申し訳なくなった。


そして家、というよりも古風な屋敷まで帰り着く。私は大きなため息を吐き、ヴェーヌァに荷物と脱いだパーカーを突き出した。彼女は苦笑いをしながらそれらを受け取ると、家の門をノックしてから、私の後ろについた。

私は服装を整えて、咳き込んで喉の調子を整えた。それから門が開くまで二、三言彼女に告げた。


「いつも通り、そのパーカーはヴェーヌァの私物として洗濯して。大人に小言言われるから。運動着と靴もお願い。明日の朝前洗ってもらった紺色のパーカー持ってきて。後、夕食が終わったら、勉強のわかんないとこ教えて。部屋に呼ぶからそれまでは自由にしてて」


「かしこまりました。お待ちしております」


そして門が開く。門の先には使用人が玄関までの道を挟んで左右に列を作っていたお辞儀をしていた。私はその中央を歩いて、屋敷に入った。



少し時は戻って、俺がシューテと別れた後のこと。俺は、釈然としない感情を引きずりながら、帰路を辿った。家に着く頃には、太陽も大地に身を埋め、夜が始まる時間だった。

家はこじんまりとした長屋の様なものだった。カラカラと引き戸を開けて家の中に入ると、家には明かりの一つも灯っておらず、時すら死んだ様に思えるほど静かだった。

「ただいま」とか細い声で呟く。当然返事などなく、紡がれた言葉は家の隅々のより暗い影の中に溶けて消えていった。

別に返事などなくてよかった。返事を期待していったのではなく、ただ礼儀の形式上呟いただけなのだから、其処には何の思い入れもなかったのだ、と俺は意味もなく強がった。


荷物と制服を居間に投げ捨てて、運動着に着替える。其の際部屋が埃っぽく思えたので“装備”に掃除を命じてから、台所へ向かって二人分の夕食を作り始めた。出来た料理を取り分けて、全てにラップを被せてから冷蔵庫に叩き込んだ。いつもは出来てからすぐ食べてしまうのだが、今日は食欲が湧かず、少し後で食べてもいいかと思ったのだ。

何をするわけでもなく、縁側に座り込んでため息を吐く。

どうしていいのか分からないから座り込んでいた。本当に、霧の中でもがいているような、目を潰され海に放り出されたような、行く宛もなく、時間の流れに巻き込まれているようだった。

漠然とした将来への不安、現在の自分に対する不満、周囲から向けられた不可解な感情、どれもこれも自分が扱うには荷が重い話で、もはや歩くことすら出来ず、その場で立ち竦む事しかできないように思えた。

掃除を終えた“装備”が隣へ滑り込んできて、暫くは共に小さい小さい庭を眺めていた。


「ツァー、気晴らしに少し走りに行きましょう」


「そっちが走ろうなんて提案するのは珍しいな。いつもは走るなとばかり言うのに」


「後天性感情値の低下、つまり気分のささくれ具合が悪化の一途なので、気晴らしを勧めるべきかと思いまして。カウンセリングも良いですが、ツァーは走る方が好むかと」


「確かにな。そうか....じゃあ少し走りに行こうかな」



歩いて数分、夜になって人気がまばらになった公園で数回小さく跳ねて体の調子を整える。ストレッチも其処其処に、走るのに邪魔になる“装備”を浮遊追従モードに切り替えて、クラウチングスタートの姿勢をとった。


「微希釈展開。もし全力で走れたらって状況に限りなく近く、かつ希釈できない脚が壊れないように調整して」


「了解しました。微希釈展開。いつも通り範囲は、こちらの希釈の影響が薄い脚部から腰部を除いた全身と周囲一帯。重力軽減、姿勢補助と、それに伴う感覚変化を補正。筋力の出力を制限。行けますよ、ツァー」


屈めた背中のすぐ後ろに張り付く様に浮遊する“装備”から絹糸のような幾筋もの赤橙の光が漏れ出して、腕や胸に絡み、また周囲に繭のような物を形成する。

繭が出来上がるにつれ感覚が変わる。脚に埋め込まれた気怠さも、本気で脚を動かせない煩わしさも消え去った。

俺は笑った。地面を踏み込む。蹴り砕き、全てを置き去るつもりで、脚を振り抜く。


そして、走り出した。繭はスタートと同時に砕け散り、絡みついた光はオーラに変わって風に流され尾を引いた。

脚の回転を上げる。走り出した瞬間から全速力まで、自分が出せる限界の力で加速を続ける。一切手を抜く必要はない。一切邪魔するものはない。ただただ、速さを求めて、俺は光の筋のなった。




「2000m、2分23秒99。平均50km毎時ぴったり。流石ですね。他人種ではこの速さは出ません」


「........はぁ、結構、いいな。シューテの記録とも、近い。本気で走れりゃこれくらい、なんてことない、んだよやっぱり」


公園の周囲を沿うように走り終わって、俺は近くの芝生に横たわっていた。荒げた息の合間に、自動販売機で買った水をあおって、火照った体を冷やしていた。

「あー、脚がまともだったらなぁ」と叶わぬ夢に想いを馳せる。けれど今回は今までの縋り請い願うような心情ではなく、冗談で言うように軽く晴れ晴れとした想いだった。

心の奥底に重りのように淀み溜まった感情が消えたわけではなかったが、走った事で随分と後ろに置き去る事が出来、暫くは其の感情に囚われることもなさそうであった。


「ツァーくん?」


寝転がりながら目を瞑って夜風に耳を澄ませていると、女性に呼び掛けられ、俺はビクッと体を飛び起こした。

見渡してみれば、芝生の端に沿って作られた公園の遊歩道から、此方に歩いてくる人影が見えた。

次第にシルエットは具体的になり、おっとりとした雰囲気の輪郭が見えた時、俺は其れが誰か理解した。


「...ああ、姉さ、ヴェーヌァ。こんな時間にこんな所でどうしました?」


「周りの家の人も居ないですから、余所行きの口調でなくていいですよ。ちょっと赤橙の弟らしい光が走ってたのが見えたので気になりまして、話しかけに来ちゃいました」


「...弟なんてそんな。異父姉弟でその上一緒に暮らした時間は数年足らずだし」


「それでも半分も血が繋がってますし、繋がってなくともきっと私はツァーくんのこと弟だって思って居ますよ。それにツァーくんも姉さんって呼んでくれるではないですか」


「でも俺をーー


ーーー産んだせいで母さんは死んだんじゃないか。と言いかけた俺の口を、彼女は指で塞いで、目を閉じながら首をゆっくり横に振った。


「それは言わなくていいですから。もう産まれた時のことで私に引け目を感じなくていいですから。誰がツァーくんの学校書類処理してると思ってるんですか。嫌ならそんなことしていませんよ」


「シューテ様のついでにやってるだけだろ」


「意固地ですね、相変わらず。負い目と劣等感の塊の様に捻くれてしまって。きっとついでじゃなくてもやっていますよ。もはやまともな私の家族はツァーくんとシューテ様だけですから」


ヴェーヌァは俺の隣に膝を抱えて座り込むと、顔を伏せて深くため息をついた。


「はぁ...どうして母様は死んで、父や“あの人”は生きているんでしょうね。どうして本家の人たちは私たちを苦しめるのでしょうね」


きっと、彼女の言う“あの人”とは俺の実父のことだろう。彼女からしてみれば、母の再婚相手であり、共に過ごした時間も短い赤の他人だった。元々彼女が俺の実父を好まなかったこと、俺が走れなくなってから掌を返す様に俺への関心を失ったことから、彼女は酷く俺の実父を軽蔑していた。


「姉さんあんまりそう言うことは....」


「分かっていますよ。影で言っているとつい日常でポロリと口をこぼしてしまうかもしれないと言いたいのですね。ですが偶には愚痴を吐いたっていいではないですか。少ししたらシューテ様と共に息苦しい本家の檻に帰るのですから」


「そういえば」と俺は辺りを見渡した。ヴェーヌァはシューテの“お側付き”なのだから、シューテの姿が近くにないのは異様なように思えた。彼女はシューテの護衛も兼ねているので、そういう意味でもシューテが近くにいないのは不自然だった。


「ああ、シューテ様なら少し夜風に当たると連絡なされて、何処かへ行ってしまわれたっきり合流できていないのです。“装備”からの信号を見るに何事もないようですし、殺人誘拐も年単位で発生してないこの国なら危険もないかと思って、散歩しながら迎えの連絡が来るのを待っている所ですね」


「嗚呼」と俺は顔を引き攣られた。彼女は抱えた膝の間に埋めていた顔を持ち上げると、少し悩むように俺の顔を眺めて、「あーー」と納得するような表情を浮かべた。

俺は不可解な彼女の行動に居心地の悪さを覚えて「なんだよ」と尋ねた。


「いえいえいえ、何があったかと思案すれば、シューテ様はツァーくんと揉めたわけですか」


俺はシューテと話した内容をヴェーヌァに伝えようか迷った。確かに彼女に助言を請えば、シューテが言わんとしたことも、この心に重く残るしこりも取れるだろう。けれど、そんな利点よりも極めて単純な「あんまり知られたくない、恥ずかしいような怖いような気がする」という心情が先に来て、結局俺はそっぽを向いて話が流れるのを待ってしまった。


「言いたくないのなら言わなくともいいのです。ツァーくんもシューテ様も多感な時期ですからね。色々とあるのでしょう。若いですねー」


「そっちだってまだ28だろ。大人ぶった口調で達観した物言いはなんかムカつく」


「女性に年の話は厳禁です。それに実際聞いて欲しくないのでしょう?ならそれでいいではないですか」


ヴェーヌァは少し楽しそうに微笑んでいた。俺には何が面白いのかは全く理解できなかったが、彼女には今の会話の中に和やかな何かを見出したらしかった。彼女は微笑みからくすくすと上品な笑いを経て、いつもの慈愛を湛えた笑顔に戻った。

そして彼女は気を使って少し話題を変えてくれたようだった。


「ちゃんと進路は考えていますか?あの人はそんな話微塵もしてくれないでしょうから自分でしっかり考えるのですよ?成績もあまり良くないですけれど、やりたいことをする為にも学力は入りますからね」


「うへぇ、なんで成績のこと知ってるんだよ」


「手続きはわたしがしてますから当然です。保護者名義はあの人でも、実際にツァーくんを見ているのは私ですから。成績表くらい見ていますよ」


「そりゃどうも。姉さんはどうなんだよ?」


「私は」と彼女は少し言い淀んだ。優しかった笑みはあまりに何かを憂う瞳に掻き消されて、空気が重くなった気さえした。


「....私はシューテ様について行きます。やっぱり私はシューテ様の“お側付き”ですから。それに結構今の生活もいいものですよ」


嘘だ、と俺は知っていた。ヴェーヌァは今の生活を甘んじて受け入れているだけなのだ。もし出来得るなら、彼女が彼女の大切なものを支えるだけの社会的な地位を持っているならば、彼女が数多のしがらみを引きちぎるだけの一族内の権力があるならば、彼女は真っ先にナムルマティア一族から離脱するだろう。

だが、其れが出来ないのだから、奥歯を噛み砕くほどの悔しさと無力さに苛まれながらも一族内に留まっているのだ。

だから、そんな彼女が今の生活もいいなどと言うはずがないのだ。


違和感がある。シューテの話を聞いた時の様に、濁り溜まって心の底に沈殿した、上手くいかないことばかりの時に感じる、むしゃくしゃした感情だ。其の感情が心の内壁を引っ掻き続けている。

俺はヴェーヌァに「何かしてあげたい」と思った。本家から隠れながらアルバイトをして資金を稼いで、知識をつけて、一族以外のコネを探して。其の果て、結局、仕来りから逃れられないと膝を折った彼女を知っているからこそ、何の解決にもならなくとも、何かしてあげたいと思った。

けれど、同時に「無理だ」とも思う。ヴェーヌァは特別だ。聡明で行動力があり、広い視野を持っていた。

其れに加えて、常識を打ち砕いて進むだけの精神があった。足が速かっただけの、もはやその速さすら失った俺とは違う。速さという価値観しかない俺とは違う。

そんな特異な彼女に、俺よりも先を歩く姉さんに、こんな俺がなにをしてあげられるというのだ。

そもそも俺は速くなって一族の輪に戻りたいのだ。歪で、不公平で、決して誇れた物ではないとしても、俺は速くなって、其の輪に帰って、みんなに褒めてもらいたい。

姉さんとは違って俺が見ている世界は、小さく、狭いのだ。


俺はスッと立ち上がって、膝を抱え込むヴェーヌァに手を伸ばした。ヴェーヌァがゆっくりと手を持ち上げ、此方の手を握ると、俺は一気に彼女の身体を引き起こさせた。

せめて俺に出来るのは、此れぐらい事ぐらいだった。


「姉さん、“装備“に通知が来てる。きっとシューテ様からの連絡だ。あの方はせっかちな所があるから早く行かないと」


「ああ、本当.....ですね。全然気付きませんでした」


彼女は服を払い芝生の欠片を落とすと、慌てて遊歩道へと駆けていく。そして去り際大きく此方に手を振ってこちらに叫んだ。


「ツァーくん!ナムルマティアの自治権は後2年ほどで喪失します。そうなれば、ナムルマティアはこの国から離脱するでしょう。私はシューテ様に着いて行きます。ですがあなたはその必要がありません!役職がないあなたなら、一族から離反してこの国に残れます!自由になれます!だからその時のために仕事はしっかり選ぶのですよ!」


「わかってるよー」と俺は苦笑いをして、彼女を見送った。

小言が多いな、と苦笑いをしたのではなく、姉さんも俺を置いて行くのか、と寂しさを覚えたのだ。

ナムルマティアも実父もシューテも俺が走れなくなった途端、見向きもせず走り去ってしまった。母さんも、俺を産んだ時他界して、俺をこの世に置いて行った。そして今度は姉さんも、独りでこの国に俺を置き去りにするのか、と。

哀しくて仕方なくて、再度芝生に大の字に寝転がって、息を殺しながら、密かに咽び泣いた。


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