苦痛の人間たち

織:オリ

ひとりめ

もう、逃げ出してしまいたい。そんな一心で、僕はじっと玄関を見つめる。

このドアの先には、どんなに綺麗で、素敵な世界があるのだろう。

「それ」を実行する代わりに、このドアを開けて飛び出すことも出来ない自分の弱さに項垂れた。

これで何回目だろう、家を飛び出そうとしたのは。いつでもきっかけは、些細なことだ。母の一言、父の嫌味。

そうして僕の心には、そんな小さいストレスが積み重なって行った。

「もう、大人が嫌なのだ。」

大人なんて、自分にとって都合の悪いことばかり見て見ぬふりをする、卑怯な生き物なのだ。しかし、いずれは僕もそうなってしまう。周りに、そう思われてしまうようになる。

明日こそ、明日こそ。そんなことを思っていたら、もう何年も経っていた。

もう、僕にはどうすることも出来ないのだ。

「大人」になるまで、これをずっと繰り返すのだ。

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