第13話 石動 通

◆石動通◆


――流石に限界だ。


指名手配されてからはや7日。

東京都で逃げおおせるのは不可能だ。

県外に行かなくては。


――そう俺は巷で噂の殺人鬼だ。

女3人をナイフで刺して殺してやった。

それ以外はふつうの28歳男性だ。


「よぉ、兄ちゃん」


俺はその時、夜中の公園で一人ベンチに座っていた。

いきなり声をかけられて驚いたが、声からしてガラの悪い奴というのはすぐわかった。

おっさん相手にたかろうってわけだ。

ぶっ殺そうと思って振り向きながらポケットにあるナイフに手を伸ばす。

もう3人殺ってるわけだから1人くらいじゃかわりゃしない。


――あ?


そこにいたのは大きく胸元の空いた服を着て顔にタトゥーが入った190くらいの大男。

そしてなにより、頭に角が生えていた。


「おいおい、兄ちゃんそんな物騒なもんしまいなって」


――気にするな。

ナイフで切りかかる。

生き物なら殺せるはずだ。


「残念、悪魔には効かねぇよ」


「悪魔……?」


「そ、悪魔だ。 アークマインってんだ」


◆◆◆


俺はすぐ契約した。

当たり前だ。

まあ、東京からでられなくなる制約はあったが、この身体能力、そして『武装イスティント』。

これがあれば警察なんかこわかねぇ。


「いやあ、通。 てめえ才能あるぜ。 ホント」


「そうかぁ?」


「あぁ。 契約者の才能もあれば『想い』も完璧だ」


「『想い』……。 悪魔、俺からどんな『想い』が見える?」


「逃げたいってのと


――嫉妬だな」

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