友梨の場合

 それは友梨ゆりがまだ保育園に通う頃だった。


 朝早くから園に預けられ、お日様が隠れた頃にやっとお母さんが迎えに来る。


 友梨は、それが当たり前だと思っていたし、寂しいとも思わなかった。


 園には優しい先生がいるし、周りの友達も友梨と同じように朝から暗くなるまで一緒に遊んでくれるからだ。


 ある日、園外保育で公園に遊びに行った時、丁度他の幼稚園の子どもたちも遊びに来ていた。


「今日は他の園のお友達も遊びに来ているので皆仲良くね」


 先生に言われた通り、順番を守り遊具で遊ぶ。


 滑り台やブランコでひと通り遊んだ後、友梨は砂場へ向かった。


 そこには幼稚園に通う女の子がひとりで砂の山を作っていた。


「いっしょにトンネルつくろ」


 友梨がそう言うと、女の子は「いいよ」と答えた。


 砂の山にトンネルを貫通させた頃には2人は仲良くなっていた。


「わたし、ゆりっていうの。あなたのお名前は?」

「わたしは、あみ」

「あみちゃん。また遊べるかな」

「ようちえんが終わったあと、おかあさんとよくここに来るよ。ゆりちゃんは?」


 亜美の言葉に友梨は驚いた。


「え? よるに遊びにくるの?」


 今度は亜美が驚いた。


「ようちえん終わるのよるじゃないよ?」


 聞けば、お母さんが亜美を迎えに来るのはお昼ご飯を食べて少し遊んだ後らしい。


「……いいなー。ゆりのおかあさんも早くむかえに来てくれたらいいのに……」


 友梨は初めて寂しいと思った。

 それと同時に亜美へ嫉妬した。


 勿論、それが“嫉妬”と言う名前のものだとわかるはずもなく、ただ“あみちゃんはいいな”と思っただけ。


 それからすぐに、幼稚園に通うようになった。


 今は明るいうちにお母さんが迎えに来てくれる。



 心の中に芽生えた“嫉妬”は消え去った。

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