一章七話 お外へ出たい!
ミッチェルとの同衾、そして仲間との模擬戦から二日ほどが経過した。
大体のマップは完成したし後は入口、僕からしたら出口を見るだけ。それでここの洞窟は完全に記憶したことになる。そのために一度、崖上のゾンビウルフを全て潰すことを模索していた。
そこでミッチェルとの共同生活は終わりだ。もしかしたらこのままの可能性もあるけど。
それよりも問題なのはゾンビウルフ三体のことだ。出来れば連れていきたいところだけどさすがに価値を知っている人なら殺しに来るかもしれないし。それだったらここに残ってもらいたいんだけど、どうしようかな。
まあ、一度帰ってくるんだからそのことを話せば何とかなりそうだけど。
【現在ゾンビウルフの個体数は四千ほどです。それも魔国中心にですね。希少性や食材としての価値を考えればその考えは適切かと】
お墨付きは貰った。でも、
【ただあの子達は許さないでしょうね。離れ離れになることを嫌っているようですし。配下となっていますからいくつか手はありますよ】
うーん、ぶっちゃけた話、召喚士とかでもないしなる気もない。うーん、レベルによってはセカンドとかサードとかでジョブに就けられるみたいなんだけど……。
【マスターなら10、25、50、75、99ですね。種族進化は最高値である99の時で条件がいくつかあるようです】
うん、条件は聞きたくないな。
それにしても10から就けられるならもう僕なにか職業に就けられるんだよね。
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名前 ギド
種族 吸血鬼・真祖(人族)♂
職業 『現在三つから選択可能です』
レベル 11
HP 135/135(S)
MP 685/685(S)
攻撃 95(S)
防御 103(S)
魔攻 267(S)
魔防 276(S)
幸運 68(S)
魅力 135(S)
スキル
料理F
日光弱体
固有スキル
経験値上昇E
ステータス補正E
魔眼E(魅了、鑑定、偽造)
スキル創造
テンプレ
ナビゲーション・イフ
魔法
火F。風F。土F。水F。光F。闇F。無F。炎F。雷F。木F。氷D。聖E。呪F。空間E。
耐性
聖F。呪E。
称号 魔神の加護。絶滅種の主。洞窟王。
心器 ワルサーP38
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ステータスがあんまり高くないのはジョブを、というか職業に就いていないからだよなぁ。
【無職でこれだけステータスが高いのは異常ですよ。特に魔力面では抜きん出ています】
そんなんだろうな、とは思っていた。
うーん、本当に悩むなぁ。職業に就いても守り抜ける自信がないんだよな。一番いいのは召喚士に就いて従魔空間に三体を入れること。……だけどなぁ。
【ステータス上昇が低いですからね。圧倒的に就ける三つの中なら召喚士は外れ職業ですから】
そう、三つ就ける職業、とは言っても実質一つしかないのだけどの中に召喚士はあるのだ。ただ問題なのはステータスがあまり向上しないことで……。
ちなみに残り二つは魔王と魔術師だ。僕はどうしても魔術師になりたい。魔力面が元から高いので、もっと上昇するのは目に見えているからだ。それに魔術師は魔法使いの上位ジョブ、何故か分からないけど僕がなれる三つの職業は全て一段階進化したジョブだった。
ちなみに魔王は固有ジョブだったりする。
もちろん、使う魔法にも補正がかかるわけで……。うん、決めた。
「アイリ、アキ、アミ。悪いんだけどここから出たら別行動だ。少し頼みたいことがあるからね」
「ガウ?」
「そう、頼み事。みんなさ、強いには強いけど進化をしていないだろ? 出来れば僕の手を借りずに強くなってもらいたいんだ」
【私経由で接続は繋ぎますから安心してください】
頼りにしている。
テンプレの能力でイフに機能を追加しておいた。いわば念話とかテレパシー機能……いや、携帯電話機能だ。電話やメール、通訳、その他もろもろが出来る。
それが効いたのか、三体は俯きはしたが反対はしなかった。あー、良かった。悲しませたくはないからね。
「安心して。みんなが強くなれば、そうだな、レベルが二十をすぎればいくつかの進化先があるはずだからさ」
多分、あれを選ぶよなぁ、と内心思う。だって三体とも僕と会話をしたいんだよ? それなら獣の姿を捨てるに決まっている……。
「遠くても話は出来るし、呪付与の牙なら大概は簡単に倒せるから、そう時間はかからないはずだよ」
そも、ミッチェルと戦ったとしても呪持ちなら勝てるしね。呪耐性がないならルクス君レベルとなら案外いい勝負をするんじゃないかな。
許可を貰ったところで僕は就きたかった職業をタップする。いい感じに誤魔化せた……って、ヤバいなこれ。
「力が……溢れてくる」
ミッチェルはよく分かっていないみたいではてなマークを頭の上に浮かばせているが、イフ経由で配下は理解出来ているらしい。
うおっ、骨が軋む……。
職業持ちってこんな苦しみを負って無職から開放されるのかッ!
【ただのステータスの差がありすぎて体が適用しようとしているだけです】
イフの声が聞こえてすぐにアナウンスが鳴り響く。
【魔術師への就職によって魔法のスキルレベルを全て1あげます】
【また、魔神の加護の作用により精霊魔法を獲得しました】
【全ての魔法を獲得したため精霊魔法と空間魔法を除いた属性魔法を合成し、固有スキル全属性魔法に変化させます】
【ステータスが低いため大幅な補正をかけます】
【MPにプラス二千、魔攻にプラス千、魔防にプラス千二百、他は三百ずつ上昇させます】
【適応が完了しました】
短い時間だったと思う。
体感では長くは感じたけど頭では理解している。そんなに時間はかかっていない。
うーん、不穏な言葉が多くあったけど今は忘れよう。
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名前 ギド
種族 吸血鬼・真祖(人族)♂
職業 魔術師
レベル 11
HP 435/435(S)
MP 2685/2685(S)
攻撃 395(S)
防御 403(S)
魔攻 567(S)
魔防 576(S)
幸運 368(S)
魅力 435(S)
スキル
料理F
日光弱体
固有スキル
経験値上昇E
ステータス補正F
魔眼E(魅了、鑑定、偽造)
スキル創造
テンプレ
ナビゲーション・イフ
全属性魔法E
魔法
空間E
精霊F
耐性
聖F。呪E。
称号 魔神の加護。絶滅種の主。洞窟王。苦痛に耐えた者。
心器 ワルサーP38
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うん、一言だけ言わせてくれ。
変わりすぎだろ! というか待て待て!
なんか称号が増えているの今気づいた!
絶滅種の主〜世にも珍しい人族では絶滅したと言われているゾンビウルフを配下に持つ者のこと。絶滅に近い、もしくは弱っている者を仲間にする確率を高める。
洞窟王〜洞窟を愛し洞窟に愛された者へ送られる称号。洞窟内での夜目や奇襲などに補正がかかる。
苦痛に耐えた者〜ご愁傷様です。よく耐えられましたね。これからもこれを思い出せば少しは辛いことも楽に感じられる……かも知れません。
……最後のやつを除いて使えるもので少しだけ腹が立つ。ってか、最後のやつ絶対誰かが見て与えているだろ!
「ガルルゥ……?」
「……うん、ありがとう」
アイリの優しさが身に染みる。
頬を撫でられているだけなのにすごく嬉しい。……クヨクヨしても仕方ないや。早く行こうか。
こういう時は気分転換するのが吉だよ。悪い事ばかりではないんだから。ステータスもとても高くなっているしね。多分、ステータス補正が相乗効果で発動しているからだろう。イフからもそう言われたし。
「……大丈夫ですか?」
「大丈夫大丈夫。さあ、行くか」
僕は足早にその場を去った。
◇◇◇
「……二体、多分これで最後だ」
「分かりました!」
思いのほか早く事が進んでいた。
特に僕の出番もなく四人、いや一人と三体がゾンビウルフを片付けてくれる。ステータスが上がったことを実感したかったがそうも言っていられないか。
ミッチェルはもう8になっており僕に追いつくのも時間の問題となっていた。どうやら幸運は経験値にも関わってくるらしく、今ではアイリ以上に速い。
戦ってもらっている最中に辺りを探ってみたが敵の気配は感じない。本当に崖上の敵はこれで最後のようだ。嬉しいような悲しいような、いや、本心は悲しい気持ちでいっぱいだった。もう少しレベル上げに貢献してもらって外に出ても楽に……。
僕の野望打ち砕かれり。
そんなことをしている間に戦闘が終わっている。……カッコいい出番が欲しいです。
「……そうだ、こんなのって見たことあるか?」
ミッチェルの近くまで行き右手で触れる。
おー、目を見開いているなぁ。やっぱり空間魔法って珍しいんだろうな。
【珍しいですよ。歴代賢者のみが持つと言われる魔法を普通の人が持っているわけがありません】
なんかそう言われると嬉しい。
「あの……どこに行ったんですか?」
「拠点にさ、ゾンビウルフの山があったでしょ? あそこに送っておいただけだよ」
「……っ。さすがです」
信用していないといえば嘘になる。
ミッチェルのことは好きだし守りたいとは思う。でも今は無理かな。
嫌な予感がするんだよね。絶対に僕が死んだと分かれば妹が……いや、愚妹が何をするかわかったもんじゃないし。
叩かれるのは嫌だけどあいつの本心知っているの僕だけだったし。案外自殺していたりして。……ここに来ているとか?
いや、ないない! というか、そういうのはやめて欲しい! もう家族とは縁を切りたいからね!
あっ、友人なら会いたいかなぁ。
例え王国にいたとしてもスキルを駆使して会いに行ってやる。
一応はお金がないわけじゃないしね。このまま外へ出るのも手だと思う。ルクス君の腰に下げてあった麻袋に金貨と銀貨が入っていたから。もちろん、ミッチェルと山分けすることで確定している。
あれれ、出たい欲求の方が強くなってきたぞ。いやまあ、出てもいいんだけど、さ。出て何をしようか、だよね。
後は呪魔法を扱えるようにしたい! 僕に一番適正があるのは氷と闇系統だからね! 即死効果のある呪をマスターするのは当たり前さ!
やっぱり、冒険者かな。商人でもいいや。ただ一箇所に縛られるようなことにはなりたくない。拠点は魔法国とこの洞窟、誰かと結婚して子供は二人くらい欲しいな。
「……私でよければお手伝いしますよ?」
「うん? ありがとう……って、え?」
あれ? 口に出していた?
いや、まさかそんなテンプレートなことをするわけが……、
「子供を二人……産めるといいなぁ」
あっ、これは言ってしまってますね。
でも、ミッチェルが嬉しそうなら僕も嬉しい。……カッスやな、離れ離れになるかもしれないのに。
穴があったら入りたいよ。……って、アイリ! 物理的にそうしようとしなくていいから! 穴は掘らなくていいから!
少しだけ考えこむ。
バチンと子気味のいい音が響いた。
自分で頬を叩いたとはいえ痛い。やりすぎた。
甘い空気に浸りすぎてはいけない。
僕は……魔族、いやなんでなのかは分からないけど。元人族だしね。
「っと、着いたね」
一度下へ降りて入口とやらを見てみよう。
あー、久しぶりの日光を浴びたいのぉ。
「ここを……どうやっておりますか?」
ミッチェルの問いに無言で魔法を展開して返答する。
氷の階段、落ちないように手すり付きだ。
メルヘンチックだなぁ。これだから「可愛ぃ」とか言われてたんだろうな……。
「……綺麗です」
「バウ!」
思いのほか女性陣からは高評価だった。
嬉しいことだ。いや、元の世界では当たり前でもこっちだと珍しい使い方だもんね。よく考えれば変な使い方か。
「きゃっ」
「大丈夫、僕がエスコートするから」
ミッチェルの右手を掴んで転ばないようにする。前に転びそうだった時に自分の方へ引き寄せるのは仕方ないと思うな。
「もう少しで知らない気配がある場所に出る。心して」
一応、僕は即死じゃなければいくらでも回復方法がある。ルクスの血は彼が持っていた瓶に詰めたから治すのは一瞬だからね。
多分、この先は出口がある。少しだけ明るくなっているのは日光だろう。ああ、久しぶりの陽はどんなものか気になるな。
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