猫地蔵
うにどん
本編
俺の町に変わった地蔵がある。
猫の形をした、その名もズバリ『
寺裏の林にひっそりと佇んでいるその地蔵には、ある噂があった。
――丑三つ時になると猫地蔵は鳴く。
まあ、夜中の二時か三時の間、猫地蔵は「ニャー」と泣き続けるというもので怪談と言うよりも不思議な話に近いものだ。
さて、俺がどうして猫地蔵の話をしているかというと、俺が通っている高校の不良四人組がやらかしたからだ。
季節は夏。もうすぐ夏休みという解放感からか不良達が猫地蔵の噂を確かめに肝試し感覚で深夜に林に入り其処で怖い体験をしたらしい。
問題はその後で怖い体験をした不良達は助けを求めに寺へ。
普通に助けを求めれば良かったものの玄関で「開けろ!!!!!!」と叫びながらガンガン扉を蹴ったり殴ったりしたのと時間帯が深夜だったのもあり寺の人達は恐怖から警察に通報、そのまま補導された。
当然、不良達は停学処分、それを朝一番、クラスの朝礼で伝えられた。
「あ~、だから町内会の会議で夏休みの間は夜回りしようという事になったのか」
その話を聞いた爺ちゃんは開口一番にそう言うと茶を少し飲み、真剣な表情になると俺にこんな話をした。
「猫地蔵が置いてある林はあの世の入り口だと言われているんだ」
突然の話に俺は「はあ?」と声を上げると爺ちゃんは落ち着けと言わんばかりにお茶を淹れ俺に渡すと話しを続けた。
「昔、あの林は一度入ったら出てこない人が沢山居た、そんなに深くない林なのにな。だから、其処はあの世の入り口で林に入った人はあの世の住人に誘われて二度と戻ってこないと言われていた。
俺が小さい頃、その話を聞いた寺の住職が地蔵を建てた。二度と戻ってこない人を減らす為にな、でも其れだけじゃ力が弱いと思ったのか町の守り神を模る事にした。
昔、此処は養蚕が盛んでな蚕を鼠から守ってくれる猫を守り神として祀っていたんだ、だから、猫を模った地蔵を建てた」
「そ、そうだったんだ」
「で、地蔵を建てた後からは林に入って出てこない人は無くなった、当然、猫地蔵のお蔭だと誰もが言ったよ。
だけど、完璧に抑えてる訳じゃない。丑三つ時にあの世からの力が強くなるそうだ、だから、猫地蔵は鳴いて知らせるという。今は近づいてはいけないと入ってはいけないとな。だが、その忠告を無視して入った者は…………」
爺ちゃんはお茶を一気に飲むと眉間に皺を寄せて険しい表情で言った。
「数日後か数か月後に居なくなると言われている」
俺は当然そんなの出鱈目だと思ったから「嘘くせぇ」と言うと爺ちゃんは笑って「そう言われてるだけだがな」と返すと、林に入って出てこないという話は本当だから興味本位で絶対に入るなと強く忠告された。
それから夏休みに入ると俺は爺ちゃんの話をすっかり忘れて過ごした。
そして、夏休みが終わるという頃。
――あの不良四人組、祭りの日から全員、行方不明だって。
猫地蔵 うにどん @mhky
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
亡き母の夢/うにどん
★8 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます