両親との再会

 誰も死なせない…そんなこと、大して活躍なんかしていないわたしが思うのは、願うのは酷く身勝手なのかも知れない。


 でも、そう思わずには、願わずにはいられない、だってわたしはみんなの事が大好きだもの。


 ちょっと口うるさいけれど美人で頼りになるお母さん、優しくて仕事熱心なお父さん、常にツンっと澄ましているけれど、いつも冷めているように見えるけれど本当は心は温かい裕太、一翔、義経、季長。

 主君の為にいつも一生懸命な忠信、継信、義盛、弁慶。

 面倒見が良くていつでも頼りになる里沙、奈央。

 初対面のわたしに優しくりてくれた友里亜さん。

 わたしの隣にいてくれた美晴ちゃん。


 ありきたりな言葉かもしれないけれどわたしはそんなみんなが好き。

 友達として、家族として、仲間として。

 だから生きていて欲しいんだ、幸せになって欲しいんだ。


 そんな考え事をしていると前から意外な人物がこちらに向かって走ってくるのが見える。


「お母さん!?お父さん!?」

 それはわたしの両親だった。

 ずっと避難所に居た筈なのになんで!?

 驚いているうちにお父さんとお母さんはわたしに走り寄っていき、二人はわたしの身体をギュッと抱きしめた。


「会いたかったわ、明日美…。」

「元気そうで何よりだ。」

 お母さんとお父さんはそう言ってまたわたしの身体をきつく抱きしめた。


 う…く、苦しいよ…。だけど…。

「わたしもお父さんとお母さんに会えて良かった…。」

 そんなわたしと両親の様子を美晴ちゃんは泣きそうな顔で見つめている。


 そっか、もう美晴ちゃんはこうやって両親に抱きしめられる事もないんだね…。

 彼女は今頃、家族の事を思い出しているのかもしれない、出来れば美晴ちゃんには自分を責めて欲しくはないな。


 暫く経ってわたしは両親に気になっていた事を聞いてみた。

「なんでわたし達の事を探したの?」

 するとお母さんが茶色く澄んだ瞳に涙を溜めながら、

「当たり前でしょう!?心配だったのよ、多感な時期の女の子や男の子がこんな所にいる事が堪らなく心配だったのよ!!」

「多感な時期は色々と感じやすいの。だから心配でつい探し回っちゃった。」


 お母さん…。そんなにわたし達の事を思っていてくれたんだ…。

「でもこれからは一緒よ、わたし達もお手伝いさせてもらうから。」

 お母さんはそう言って微笑んだ。


「それにしても奈央ちゃんに里沙ちゃん、裕太君に一翔君、義経君も季長君も大きくなったわね。」

 お母さんが6人を懐かしむように見つめている。


「継信君も忠信君も大きくなったなあ、弁慶君も義盛君も元気そうで何よりだ。」

 お父さんがまるで息子の成長を祝うかのように4人に語りかけている。


「みんな疲れてるんじゃないの?一旦、避難所に戻ったら?」

 お母さんの提案に対して裕太が

「じゃあ俺の家に来ますか?」

 と提案する。お母さんは優しく微笑みながら

「ありがとう、そうさせてもらうわ。」

 と答えた。


 とりあえず裕太の家に向かわなくては…。

 わたし達は元来た道を戻って行く。


 その時であった、目の前からこちらに向かって誰かが歩いて来ているのが見えたのは。

 SF映画でよく見る未来人っぽい服装にサイドロングの淡い茶髪に釣り上がったキツイ顔立ち…夕菜だ。


 夕菜は現代人に紛れた未来人で300年未来からやってきたのだとか。

 また、侵攻軍の幹部を父親に持ち、僅か15歳で伍長という立場で部下達をまとめ上げている。

 このパンデミックに彼女が何らかの関わりがある事はモウ明らかである。


 夕菜はわたし達に近づいていき不気味に微笑む、見るだけで背筋がゾクッとしそうな悍しい笑み。

「本当、いつまでアタシ達の計画を邪魔したら気が済むのかしら?」

 夕菜は忌々しそうな口調で吐き捨てる。


「計画ってどういう事!?」

 奈央が夕菜に詰め寄ると夕菜は残酷な笑みを浮かべながら


「計画?そんなの考えりゃ分かるじゃない…ゾンビを使って生物兵器の実験をしているのよ!!

 だからあんた達が邪魔なのよ、これ以上邪魔しないでくれる?さもないとあんた達を始末しなきゃいけなくなるんだけど、それでも良いのかしら?」


 つまり夕菜の言う事はヤツを使って生物兵器の実験をしているから邪魔をしないでほしい、もし邪魔をした場合はわたし達を殺すと。


「それとも、アタシ達の仲間にならない?あんた達って戦闘能力高いみたいだから、散々こき使ってあげるよ。」

 夕菜はそんな事を言いながらわたし達に迫ってくる。

「夕菜、あんたの思い通りになんかさせない!!」

 友里亜さんが怒声をあげる、夕菜は乾いた声で笑いながら

「そう…。そんなに命を捨てたいのね、本当に可哀相な小ひつじちゃんと小ひつじ君達ね。」

 そんな事を言いながら残酷に笑う夕菜はひどく不気味で恐ろしかった。

 それだけ言って夕菜はわたし達に背を向け去っていく、そして途中でわたし達に振り返って一言。


「あっ勘違いしないでね。アタシ15歳じゃないから、こう見えて70歳超えてるからね、お父さんなんか100歳よ。アタシの時代じゃ老化を遅らせる事が出来るのよ、それが出来ない古代人は可哀相ねえ…。

 あと最後に言っておくけれど10代、20代のガキがあんまり調子乗ると痛い目見るわよ…ふふふ。」


 夕菜はそう言い残したかと思うとパッと消えてしまった。


 何より驚きだったのが夕菜がああ見えて70を超えた老婆だったこと。

 見た目はわたしと変わらない年齢なのに…。


 それよりもこのままじゃみんなが危険だ、侵攻軍と夕菜には気をつけなきゃ…。


 そして今度はわたしがみんなを守る番なのだから。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る