それぞれの思い

美晴の思い

 ビルの高い所から女性が落ちてきてそれがゾンビになったり、目の前で人が燃えたりと衝撃的な事が続いた。


 その光景は惨いって言葉すらが優しいものに思える程で、とても正気なんて保っていられない。


 わたしはまたみんなに迷惑をかけてしまった…。


 いつもそうだ。わたしは役立たず、その癖に騒がしくて人一倍弱虫で、正直に言ってわたしはわたし自身、つまり自分の事が嫌い。


 わたしは結局明日美ちゃん達のお荷物でしかないんだ…。


「美晴ちゃん、もう怖がらなくて良いよ。」

 明日美ちゃんが笑顔でわたしにそう言って背中を撫でてくれる。

 明日美ちゃんだって怖いのに、怖くて怖くて堪らないのに、なんでわたしに優しくしてくれるのだろう?


 そう言えば明日美ちゃんはいつも夕菜やサキにイジメられていたわたしを庇ってくれたっけ。

 美人で優しくて、自分の気持ちに素直で、わたしはそんな明日美ちゃんが好き、大好き。

 それに奈央ちゃんや里沙ちゃんだって散々イジメられていたわたしに手を差し伸べてくれた。

 それに裕太君や一翔さん、義経さん、季長さんに対しては最初、取っ付きにくい人だなとか顔は良いけれど性格はかなりキツイ。そんなイメージだったのに暫く一緒に居て、決して悪い人じゃないって分かった。

 冷たそうだけれど、完全に冷めている訳ではないって事。心は温かい人だったんだって。


 お母さんもお父さんも遙を亡くした時は正直地獄の底に叩き落されたみたいで、もう生きている意味なんて無いって思っていた。


 でも、誰かの優しさに触れられるのならもう暫く生きていても悪くはないかな?


 正直に言ってしまえば不細工で、弱虫で、ワガママで、鈍くて、何の取り柄も無いわたしが彼ら彼女らの傍にいる事は他人から見て凄くおかしいのかもしれない。


 この先、酷く辛いことがあるかも知れない、誰かが死んじゃう事だってあるかも知れない。


 わたしは大切な人を3人も失った。もうお父さんに頭を撫でられる事も、お母さんの手料理を食べることも、遥の笑顔も、保育園のお話を聞く事、その何もかもが出来ない。

 大切なものは失ってから気が付くものなのだから。

 でも気が付いた時には何もかもが手遅れになってしまうもの。


 もう誰も失いたくはない。

 これ以上大切な人を失いたくはない。


 わたしは出来る事を精一杯するしかない、例え命の危険があってもだ。自分だけが安全地帯に居るだなんてとてもじゃないけれど出来ない。


 わたしは、みんなと一緒に戦う!そしてまた晴れ渡る空の下でみんなと笑い合うんだ!












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