滅びのメロディー

「みんな、とりあえず落ち着いてね?ね?」

 一番ひどい目にあったのは自分なのに周りの方が怒りを感じているらしい。

「これが落ち着いてられるか!!お前、氷水を掛けられたとき、心臓発作で死んでてもおかしくなかったぞ!?」

 祐太の言う通りだ。下手すれば死んでたかもしれない。

「あんた、なんでそんなに傷だらけなの?」

 お母さんが一番聞いてほしくないことを聞いてくる。それだけは言えない、絶対に言えない。

「い……言えない、言えない、これだけは聞かないで!!」

何がなんでも言いたくなかった。これ以上誰かに迷惑は掛けたくなかったから。


 今にも大暴れしそうな義経と季長の手首を必死に押さえつける。

「今、なんと?」

 それをばっちり聞いていた二人はこちらに顔を向ける。思わず、二人の手首を掴む手に力が入る。

「何もないよ!」

 と誤魔化してた。

「言わない言わない、怪我させられたなんて絶対に口が裂けても言わないんだから!!」

 心の中でずっと繰り返していた言葉が思わず漏れてしまった。

 それが聞こえたのかわたしに手首を掴まれていた二人はわたしの手を振り払ってしまった。

ま……まさか……木下と藤宮を斬りに行くんじゃ……。二人がズカズカと何処かに行こうとする。

「ねぇ、ちょっと待ってよ!!」

 わたしが叫ぶと二人が立ち止まって振り替える。

「ねぇ、もう良いから……わたしのことなんか良いから……ね?」

 わたしがそう言った瞬間、友里亜さんが飛んできて

「大変、ヤツらが此処に向かって来てる!!お願い、手伝って!」

 助かったような、怖いような、なんか複雑な気分だった。


 外に出ると、

「何これ……。」

 奈央が思わず絶句した。明らかにヤツは増殖していた。自然と大鎌を握り締める力が強くなる。


 腐った屍達は此方に向かって変な呻き声をあげながらやって来る。

 今、気がついたけど、ゾンビが発する呻き声は腐敗の過程によるもので、腐敗ガスがお腹から出てきて起こるらしいのだ。

 一人のセーラー服を着た中学生、高校生くらいのゾンビが此方に狙いを定めてやって来る。

 肌は腐敗して緑色に変色してしまっている。大鎌で頸を狙い、思い切りきりつけた。

 が……、わたしの未熟な技量では全然斬ることが出来なかった。

 ヤツはわたしに噛みつこうと腐った腕でわたしに掴みかかられ、思わず尻餅をついた。


 わたしはヤツに仲間になってしまうのだろうか?一人で絶望していると、

「明日美ちゃん!!」

 近くで里沙の声がした。 気が付くとヤツの四肢が切り落とされていた。

 薙刀を手にした里沙ちゃんが荒い息を上げている。

「さぁ、行こう。」

 奈央がわたしに手を差しのべる。わたしは彼女の手をしっかりと掴んだ。

 彼女の手から温度が伝わり、わたしはすっかり安心していた。何でだろうか?奈央と里沙と居ると、とても安心するのだ。

 また、何故か祐太達4人と居ると、何があっても大丈夫だと思えてしまう。

 でも、ヤツの数は恐ろしいくらいに増えていた。


 アアアアアアアァ……

 その大量の呻き声は世界を滅びへと誘うようなメロディのようであった。

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