今日のソライロ~死の都 青空の下でまた君と笑い合えたら

NAZUNA

プロローグ

 わたし、本山明日美は、死の都を歩いていた。

 友里亜さんからもらった武器の大鎌をその手に握りしめる。


 すると、鼻をつく腐敗臭がした。同時に不規則な呼吸音。

 危険を感じて振り返ると、一スーツを着たサラリーマンらしきゾンビが、此方に襲い掛かっていた。

 腐敗して、変色した腕をわたしに伸ばしくる。

 変色した歯をカチカチと不気味にならしながら、噛みつこうとしてくる。

 死者が生者の脳ミソを求めて.....。

 大鎌をゾンビに降り落とそうとしたが、もう遅い。

 ゾンビはわたしの体をがっしりとつかんでいたのだ。


 もうダメだ。わたしは大切な人の前で死んでしまうのだろう。


 ゾンビは顎が外れたかのような大口を開けながら、わたしに再び噛みつこうとした。


 もう、駄目だ……。わたしは最期を悟った。


・・・みんな、ごめんね・・・。

 死ぬって思ったその時だった。鈍い音を立てて、重い何かが地面に倒れるようだ。それにゾンビの気配はもう感じない。

 恐る恐る目を開けてみると、ゾンビが倒れていた。切り落とされたであろうゾンビの首が足元に転がっていた。

 ー助かったー

 目の前に日本刀を手に握りしめて立っている義経がいた。

「明日美殿!!」

 日本刀を鞘に戻して、わたしに駆け寄ってくる。

「ありがとう…。」

義経、彼が助けてくれなければわたしは今頃、この世には居なかっただろう。

「おい、大丈夫か!?」

 わたしの事を心配して祐太や、一翔、季長が飛んでくる。

「うん、大丈夫だよ。ありがとうね。」

 今まで怖かった。何度も襲われて、死にそうになっていた。でも、ここまでこれたのはみんなのおかげだ。

「里沙と奈央、佐藤君たち、伊勢君、戻って来ないね。」

「大丈夫だって。きっと戻ってくるよ。」

 祐太が優しく宥めてくれる。

「行こっか、明日美ちゃん。」

 一翔がわたしの背中を優しく押す。

「きっとまた、平凡な幸せが戻ってくるわよ。」

 未来人の女子高生、友里亜さんもわたしを励ましてくれる。

 みんなありがとう…。わたしは心から誓った。必ずこの世界を救うって。

 そして分かったのだ。平凡というものは存在しないのだと。みんなが今どこかで過ごしている何気ない日常は決して何気なくない。

 平凡な日常こそが本当の幸せだってことが分かったのだ。

 でも、誰かがこのゾンビパニックで命を落としてもおかしくはない。

 何があっても後悔しないように伝えたい思いを伝えなきゃ。

 自分だって死んでもおかしくはない。

 そして、義経だって歴史的に永遠の別れを迎えるのだ。

 つまりみんなと過ごすことは、いつかくる別れへと近づきながら共に歩むと言うこと。


 すると、この状況に似合わない優しい風が吹き抜ける。

 まるでその風は、みんなの願いを遠くまで運んでいるようだった。


 思い出すのは幸せだったあの頃のことだった。


 ーまたみんなで遊びたいな。ー

 わたし達に明日なんてあるのかないのかわからない。でも、祐太たちの明日がありますように。



 そう願わずにはいれなかった。

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