今宵語るは

榊真夜

まず最初に

夜更けても 目が冴え眠れぬ其処のあなた

私はとある語り部でございます

突然語りかけられ驚いたでしょう 私は眠れぬ者の傍らに現れるもの

目を閉じ眠れ眠れと念じる者の頭の片隅で 夜伽をするのです

夢と現の狭間へ誘い やがて眠りにつかせて朝を迎えさせる

そんな夜のお助け人でございます

人によってはやれ夢魔だとか悪意ある言い方をしましょうが

それは噺の中身次第

夜のお供に噺ほどぴったりなものはございません

はてさて 眠れぬ病を患っているあなた様

一人で眠れるように出来るまで 果たして何夜費やしましょうか

そこは私の腕の見せどころ

何夜も続けて話すのに 百物語では曰く付き 千夜一夜は長すぎる 

ああ なら夢十夜ならどうでしょう

十夜で病が克服出来るなら それはそれは好都合

それでは今夜から 付き合ってくださいませ

十の夜をかけ 健やかな眠りに誘う噺

まずは眠れなければ 獏すら餌に食いつけないでしょう

では ご拝聴

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